2018 Fiscal Year Annual Research Report
パラジウム-希土類金属間化合物ナノ粒子による炭素―炭素クロスカップリング反応
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18F18361
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
細野 秀雄 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (30157028)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
YE TIANNAN 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2018-10-12 – 2021-03-31
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Keywords | Y3Pd2 / エレクトライド / 鈴木カップリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、仕事関数が小さく、しかも化学的に安定な希土類パラジウム系の金属間化合物を触媒に用いることで、反応分子である芳香族ハライド分子のLUMOに電子移動をさせ、C-Cクロスカップリング反応を低温で効率的に起こさせようというものである。本年度は、Y3Pd2が優れた触媒として機能することを見いだした。Y3Pd2は、4つのYに囲まれた四面体サイトおよび6つのYに囲まれた8面体サイトを有しており、その空間に電子が内包されているエレクトライド物質である。電子密度は、1×1022 cm-3程度であり金属Pd(5.1 eV)よりもかなり小さい仕事関数(3.4 eV)を示した。Y3Pd2は、フェニルボロン酸とヨードベンゼンの鈴木カップリング反応に対して優れた触媒活性を示し、Pd触媒よりも10倍以上高いTOF値を示した。この高い触媒活性は、低仕事関数のY3Pd2からヨードベンゼンのLUMOレベル(4.2 eV)への電子移動が速やかに進行し、活性化を促進するためであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Pd触媒は鈴木カップリング反応に対して高い触媒活性を示すことが知られているが、Pdの電子状態をいかに向上させるかや、反応中のPdの溶媒への溶出が大きな課題であった。本研究では、金属間化合物Y3Pd2を用いることで、骨格中のPdの電子状態が大きく向上するとともに、金属間化合物骨格中にPdが存在することで、溶媒への溶出の問題も解決できる。結果として、Y3Pd2は繰り返し使用しても安定に機能し、触媒性能もPdの10倍以上であることを明らかにした。このような、コンセプトで触媒設計を行った報告例はなく、新規性・独創性ともに高い成果が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Y3Pd2触媒の性能を大きく向上させるために、アークプラズマ法などを利用したナノ粒子化の検討を行う予定である。さらに、Y3Pd2触媒上での鈴木カップリング反応は、通常のPd触媒よりも活性化エネルギーが小さいため、反応メカニズムが大きく異なる可能性がある。速度論的解析やFT-IR等の分光学的解析を駆使して、反応メカニズム特に律速段階の違いを明らかにする。さらに、鈴木カップリング以外にも薗頭、根岸、檜山、Stille, Heckカップリングなど様々なC-Cカップリング反応にもY3Pd2触媒の適用を試みる。
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