2019 Fiscal Year Annual Research Report
Parental environment effects on epigenetic inheritance and offspring fitness in fish
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18F18383
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
RAHMAN MD Moshiur 東京海洋大学, 学術研究院, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2018-11-09 – 2021-03-31
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Keywords | 地球温暖化 / 気候変動 / 環境適応能力 / エピジェネティック制御 / 次世代フィットネス / 生物多様性 / 水産資源保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
生息環境の破壊や汚染、地球温暖化などの急激な環境変化に対する生物の適応機構の解明は、食料としての長期的な生物資源の利用と生物多様性の保全につながる。近年、世代間におけるエピジェネティック制御(transgenerational epigenetics)のような、DNA配列に依存しない遺伝子発現制御機構により、次世代(子孫)の環境適応能力を向上させる機構の存在が明らかになり注目を浴びている。しかし、魚類における世代間エピジェネティック制御の分子機構に関する知見が乏しく、正確に各生物種の環境変化に対する世代間の適応能力の度合いを測ることは困難である。本研究では、魚類が環境変動(特に気候変動)に対してどのようなメカニズムで環境応答するのか、特に次世代のフィットネス向上に関わる繁殖機構エピジェネティクスの役割と作用機序の解明を目指す。本年度は、トウゴロウイワシ類を用いた実験を継続しながら、これまで得られているサンプルの分子生物学的および内分泌学的解析を進めた。また、メダカを用いた新たな実験系をスタートさせた。具体的には、将来的な温暖化を見据えた高水温環境下で、一定期間メダカ親魚を馴致飼育した後、再び常温に戻し繁殖させ、高温経験が親世代および次世代の繁殖力および形態に及ぼす影響とその世代間伝達(遺伝率)を調べるための実験系である。本実験系では、高温曝露および常温飼育中の親魚(F0世代)ならびにその子孫(F1,F2およびそれ以降)の生殖腺サンプルを用いて、高温曝露がストレス誘導型YファミリーDNAポリメラーゼの発現および生殖細胞系列における突然変異生成機構の存在を明らかにするための解析も併せて行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに順調に環境制御型飼育システムを立ち上げ、二つの飼育試験を行っている。またトウゴロウイワシ類およびメダカのいずれの試験においても、親魚および卵と仔魚のサンプリングを行い、内分泌プロフィール測定および遺伝子発現解析を開始している。メダカを用いた試験では、既に次世代(F1)個体の飼育を開始することができている。これらのことから、研究活動は概ね計画通りに遂行できていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、これまでに得られているサンプルの解析を進めると同時に、引き続き異なる環境条件(常温または高温)を経験した各区の供試魚を飼育し、成熟した個体の繁殖形質を確認する。また、環境起因と考えられる表現型の差異が世代間で伝達されるか否かを調査する。さらに、飼育試験のF0、F1、F2世代から摘出した各組織(体表組織、生殖腺、肝臓、脳等)からゲノムDNAを抽出し、各種繁殖形質に関わる遺伝子群のDNAメチル化解析を行い、世代間エピジェネティック制御機構を調査する予定である。また、本研究では、親世代における過度のストレス(この場合は高温ストレス)が、YファミリーDNAポリメラーゼを介した遺伝的多様性の創生、とりわけ、生殖細胞系列の突然変異を促進するか否かを併せて確認する。
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