2019 Fiscal Year Annual Research Report
Understanding the generation of biodiversity based on whole genome comparison
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18F18385
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
二階堂 雅人 東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (70432010)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
WU JIAQI 東京工業大学, 生命理工学院, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2018-10-12 – 2022-03-31
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Keywords | ゲノム進化 / 種特異的進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
私の現在の研究から種内の遺伝的多様性は長期間の進化的時間スケールでの分子進化速度に強く支配されていることが初めて示唆された。これは、集団レベルでの多様性から種分化に至るまで、進化史を通して、中立な変異の割合はほぼ一定に保たれることに起因していると考えられる。このことは個々の種固有の歴史よりも様々な種全体を通して共通した原理によって、種内の遺伝的多様性が影響を受けている可能性が示唆された。従って本研究により哺乳類全体での各々の遺伝子の分子進化速度から、集団内の多型サイトの数を予測することが可能となった。この原理を拡張して、私は分子進化速度に基づき、集団レベルの選択圧を推定する全く新規の統計的手法を構築した。私は、哺乳類全体の遺伝子系統樹の枝の長さの中央値と種内の多型サイトの数を負の二項回帰モデルで回帰した。分子進化速度から予想される多型サイト数からの偏差は、種特異的な進化を示している。 今日では、病気に関連した遺伝子は良く研究が進んでいる。私は、全ての遺伝子について多型サイト数の予測値からの偏差の分布と特定の病気や表現型に関連した遺伝子群の偏差を比較した。その結果ヒトで報酬経路や物質関連障害、感染症に対する免役関連の33の遺伝子群が有意に選択を受けていることを見出した。現在、この研究は論文投稿中である。加えて私は現在、公衆衛生と進化医学に関する共同研究を中国の共同研究者と行っている。私の現在のプロジェクトはカポジ肉腫ウイルスの集団の歴史に関する研究と、感染率、発癌率、薬剤耐性変異の分布の関連性に関する研究である。Clinical Gastroenterology and Hepatology誌に1報の学術論文が受理された(申請者は筆頭著者と同等の貢献)。上記に加え、現在投稿中の論文があり、この論文においては、私は筆頭著者として参画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これから産休に入る関係上できるだけ多くの研究を論文発表する必要があるが、上述の研究内容に関しては、データ分析は全て完了し、現在論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
哺乳類全体での分子進化速度からヒト種内の遺伝的多様性を予測するという私の上述の研究は集団レベルでの選択を推定する新しい手法の開発に繋がる。本研究の予察的な結果では多くの病気、とりわけ癌や自閉症、知的障害などの複雑な病気が、ヒトで特異的な機能的制約の緩和が起きていたために引き起こされていた可能性が示唆された。乳癌を用いた予察的解析で、乳癌関連遺伝子の正の最大のt値(機能的制約の緩和のレベル)となる地域では病気の発症率も高く、こうした地域に日本、南アジア、ヨーロッパのいくつかの国々が含まれることが分かった。機能的制約の緩和の度合いは、集団レベルでの複雑な病気の発症率と関わっている可能性が極めて高い。今後さらに、種特異的進化のみならず集団レベルでの遺伝子の特異的選択圧の変動の全体像の解明を目指していく。この研究により人類集団の多様性や家畜化により引き起こされた短期間での形態学的な多様化のメカニズムを解き明かせるようになることが期待される。
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Research Products
(2 results)