2019 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of molecular mechanism of indeterminate growth of skeletal muscle in fish
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18F18389
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅川 修一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30231872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ASADUZZAMAN MD 東京大学, 農学生命科学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2018-11-09 – 2021-03-31
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Keywords | エクソソーム / 老化 / 魚類 / 筋肉 / 終生成長 / トランスクリプトーム / マイクロRNA / ティラピア |
Outline of Annual Research Achievements |
所属研究室の先行研究では若齢および高齢のゼブラフィッシュにおける各組織のトランスクリプトーム解析の結果を、既報のラットの同様の研究と照合することで、魚類に特有の老化関連遺伝子の候補を得ている。一方、ラットでは若齢、および高齢の個体間で血液を交換することにより老齢ラットに抗老化の効果を及ぼす研究結果が示されている。このことから血液中に老化に影響を及ぼす因子が含まれていることが示唆されている。 そこで我々は血液中のエクソソームがサルコペニアと呼ばれる加齢に伴う筋量や筋機能の低下に重要な役割を果たしている可能性があると考え、魚類の老化におけるエクソソームマイクロRNAの役割について研究を進めた。ゼブラフィッシュは十分なエクソソーム研究に用いるのに十分な血液サンプルを得るには小さいことから、新たにモザンビークティラピアを魚類エクソソームの研究の対象として選んだ。 ティラピアの幼魚(1 歳未満)、成魚(2 歳)、老魚(4~5 歳)の 3 つの年齢層の血清試料から、超遠心法と市販のキット法を用いてエクソソソームを単離した。上記3群のティラピアから精製したエクソソームを透過型電子顕微鏡で観察したところ、小粒(150nm)の球状小胞であることが確認された。さらに、ナノ粒子トランキング分析(NTA)を用いて、エクソソーム調製物のサイズ、サイズ分布及び濃度を分析した。NTA 分析の結果、粒子径 111.7 nm の粒子が大半を占めており、これはエクソソームの特徴的なサイズ範囲(30~120 nm)と一致していることがわかった。サンプル中にエクソソソームが存在することを確認した後、全エクソソソームRNAを抽出し、small RNAを濃縮し、マイクロRNAライブラリーを調製して次世代シーケンサで解読した。現在、解読データを対象に、miRNAの発現プロファイル、シグネチャーmiRNAの標的予測、機能解析のためのバイオインフォマティクス解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナによる2、3月の研究の停止は進捗を妨げているが、年度を通して判断すれば、実績の概要に示したように、ラットの血液交換による老化抑制効果に注目して、従来計画していた単なる組織別遺伝子発現比較から、エクソソームを介した情報の伝達による老化機構の解明へと研究を一層発展させている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要で示したように、若齢、成魚、老齢の3 グループのティラピアのエキソソーム画分から作製したマイクロRNAライブラリーの塩基配列解読が完了している。今後 8ヶ月間(4月-11月)は、以下の4項目、 (1)ウエスタンブロット解析によるエクソソームマーカーの有無の調査、(2)3グループの年齢ごとの違いを調べるためのmiRNA 発現プロファイリング、(3)マーカーmiRNA の標的予測とその機能解析のためのバイオインフォマティクス解析、(4)マーカーmiRNAやその標的遺伝子発現動態の定量PCR解析、を実施する。エクソソームの存在は、透過型電子顕微鏡やナノ粒子追跡装置で確認しているが、さらにその確度を高めるとともに、魚類における特徴を検討するため、各種エクソソームマーカー、テトラスパニン、CD63、CD81、CD9、熱ショックタンパク質HSP70などの一般的なエクソソームマーカーの存在を調べる。さらにそれ以外にマーカーになりうる分子の存在なども検討する。これらによって血清サンプル中のエクソソームの存在を確認し、年齢による表面分子の量の差などを検討する。また各年齢グループのティラピアのエクソソーム中に発現しているmiRNAを調べて、各グループ間で発現差の大きいmiRNAを同定する。miRNAは、ドナー細胞から細胞外に放出されたmiRNAカーゴを含むエクソソームがレシピエント細胞に機能的に移行する際に、miRNAが複数の標的遺伝子の発現を制御することで、レシピエント細胞に作用していると考えられている。本研究では、これらのプロセスにおいて年齢差、老化との関連が示唆されるmiRNAをマーカーmiRNAとして抽出し、それらの標的遺伝子を予測する。対象遺伝子の機能を様々な観点から検討し、老化関連マーカーmiRNAおよびそのターゲット遺伝子とその機能を介した老化の分子機構を解明する。
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