2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18F18737
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
森山 卓郎 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80182278)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SHI LIXUN 早稲田大学, 文学学術院, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2018-10-12 – 2021-03-31
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Keywords | 日本語動名詞 / サ変動詞語幹 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の研究対象及びキーワードの一つは、日本語動名詞である。日本語動名詞については、今までの研究はほとんど影山(1993)を踏襲している。しかし、影山は単に「『スル』を伴って動詞化する表現」と簡略に定義しており、日本語動名詞にいったいどのようなものが含まれるか、その範囲はどうなっているかは、まだ十分に検討されていない。また、日本語に動名詞と類似し、紛れやすい概念が存在し、各研究における日本語動名詞への把握が必ずしも一致するわけではない。例えば、日本語動名詞を「サ変動詞語幹」や「動作名詞」と同一視する研究もあれば、「和語動詞の連用形」まで拡大する研究もある。こうして、日本語動名詞への捉え方が異なっているため、その研究結果は連続性と対比性に欠けている。 日本語動名詞はいったいなんなのか。その内包と外延を明らかにすることは、本研究ひいては動名詞研究にとって、基礎および重要な一環であると考えられる。それゆえ、研究の第一歩としては、日本語動名詞の定義、範囲、判断基準、位置づけを明らかにすることである。 30年9月より上記の研究課題に取り込んでいる。まず本研究における日本語動名詞の立場及び定義を明示し、その上で辞書・言語コーパスなどの調査により、日本語動名詞の数、種類、基本的な特徴を分析してきた。さらに、「サ変動詞語幹」や「動作名詞」といった日本語動名詞と紛れやすい概念との関わりを考察し、動名詞の基本的な特徴を明らかにし、その範囲と判断基準をはっきりしてきた。最後に、日本語動名詞が品詞体系における位置づけを試みた。なお、上記の研究内容に基づき、雑誌論文を1本まとめて、『高等日本語教育』という雑誌に投稿した。幾度の修正を経て、31年度に掲載される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェクトは、動名詞を研究するものである。研究の第一歩としては、基本概念の規定や研究対象の範囲、判断基準、関連概念との関わりなどを明確することが必要である。それらの検討を通して、動名詞自身の基本的な特徴も明らかになるし、次段階の研究ベースにもなる。現在までの進捗状況はほぼ研究計画に即している。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度9月から31年度3月までの研究をベースにして、31年度に主に日本語動名詞が連体修飾語になる際の諸相と成立制約、また中国語との対照研究をする予定である。具体的に、「1.尊敬{*の/する}人、回転{*の/する}モーター」のような表現、2.倒産{の/する}可能性、新築{の/した}家、配達{の/する}人のような表現であり。日本語動名詞は、連体修飾語になる際に「する」と「の」の競合が見られる。しかも、動詞形「する」「した」の方が一般的に成立し、名詞形「の」の成立の方が少ないようである。つまり、日本語動名詞が名詞形で連体修飾語になるためにある種の制約があると思われる。 なお、中国語は、語形変化を持たず、連体修飾の場合に名詞であっても動詞であっても、一括して“的”で簡単に片付けている。そのため、中国語の“的”は往々にして日本語の「の」に同一視されがちである。このような母語干渉により、中国人学習者は「の」を多用し「*倒産の会社」「*失敗の婚姻」のような誤用を生み出しやすい。このような誤用が生じる根本的な原因は、「動名詞のN」の意味機能、使用制約がはっきりしていないからであろう。 よって、31年度では、日本語動名詞が連体修飾語になる「動名詞のN」を取り上げ、その成立実態、成立条件/制約、成立要因を考察し、また、動詞形修飾語「動名詞するN」と比較しながら、「動名詞のN」の意味機能を明らかにする。さらに、中国語の場合と対照研究をし、相違点と共通点を分析を行う。その教育上の応用にも繋げたい。 上記の研究課題を解決するために、まずBCCWJなどのコーパスで用例を収集し、量的・質的考察を行い、日本語動名詞は連体修飾語になる際の諸相と文法的特徴を検討する。また、研究内容を学会で発表し、他の研究者からご意見を頂き、修正する。最後に、研究成果を学術論文にまとめ、雑誌論文を投稿する。
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Research Products
(1 results)