2018 Fiscal Year Annual Research Report
Multi-factor Productivity and Evolutionary Accounting in Presence of (Persistently) Heterogeneous Firms
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18F18759
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
有賀 裕二 中央大学, 商学部, 教授 (40137857)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LI LE 中央大学, 企業研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2018-10-12 – 2021-03-31
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Keywords | 異質的企業 / 企業効率性 / 産業生産性 / ゾノトープ集合 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの経済学の伝統では、産業の生産性増加の貢献は、産業内の企業が同質的であるみなして、資本と労働のほかに「全要素生産性」という第三要因を入れて計測する。しかし、全要素生産性というアイディアは、産業内で異なる技術が並存して生産性格差が拡大しながら成長する場合には、重要性を失う。いま総生産性の成長率APGへの貢献度を以下のように分解してみる。APG= 企業自身の成長率within (W)+企業の相対的サイズの変化 between (B1)+平均技術からの乖離 hetero (B2)。第3項が産業内の異質性を測定している。本研究では、帝国データバンクCOSMOSの日本企業の決算書を利用して、まずイタリアで研究された2005/6年のセメント産業の経験的分析と比較してみた。投入変数は従業員数、固定資産、出力変数は営業利益である。日本のセメント産業では2005/6年では非上場を含む企業総数は226社。この期間の成長要因の推計値は、APG= -0.01024031,W=-0.01008669, B1=-0.0001536175, B2=-3.131299e-10であった。さらに、本研究では、独自に2015/16年の工作機械関連産業を選んで推計した。ここで、非上場を含む企業総数は167社。この期間の成長要因の推計値は、APG=-0.00890652, W=-0.01490736, B1=0.006000871, B2=-2.606921e-08であった。セメント産業でも工作機械産業でも、日本のデータでは、異質性の動きはきわめて微小であり、さらにイタリアと相反した動きをしているように見える。つまり、異質性の増大はほとんど総生産性の増大に寄与していない。以上が、これまでの研究成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は研究協力者との相互理解をベースとして展開している。研究実施前に予定してた研究協力者は藤本隆宏(東京大学ものづくり経営研究センター教授)、Simona Settepanella(北海道大学理学院数学科准教授)の2名であった。その後、計算機科学者である佐藤浩、久保正男(ともに防衛大学校情報工学科准教授)が加わり、計測推計に重点を置いている。初年度には、研究課題を研究力者との相互理解を促進するために研究会またはワークショップを頻繁に開催した。まずLe Liが11月21日-26日の期間、北海道大学に出張、協力研究者Simona Settepanella と研究打ち合わせ。つぎに、Dr. Liが11月30日(火)PRIMA 2018のサテライトワークショップIWAM2018で研究課題と同名の研究発表を行った。さらに、藤本隆宏が主催する12月5日(水)進化経済学会「企業・産業の進化研究部会」でLiおよびSettepanellaの共著者2名が研究課題を解説。また、12月7日(金)に中央大学企業研究所研究会にて計算機科学者の佐藤、久保が加わり、研究課題の経験的分析を実施するためのデータの収集、計算方法について詳細な検討を行なった。一方、帝国データバンクCOSMOS1企業データ財務ファイルからのデータ一部の購入を決定。データ取得後、欧州での先行研究と比較な可能な産業データで予備的推計を行い、上記「研究実績の概要」で述べた計測結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の項目で検討を行う。(1)上記の「研究実績の概要」では、産業の異質性の動きはきわめて微小であり、さらにイタリアのセメント産業との比較では相反した動きをしているように見える。この結果に2通りの解釈が生じる。一つは、日本の産業が非競争的、公共事業依存的で硬直していると考えることができる。もう一つは統計的推定の改訂を試みることである。実際、B2は工作機械産業でも10のマイナス8乗というサイズである。従業員数のサイズは2-3桁、固定資産のサイズは6-8桁である。そのため、引き続き、佐藤、久保の両氏の協力を請い、桁数のサイズの調整をして再計算する必要があだろう。(2)産業の非競争的であるかどうかは、藤本の研究協力を得て、セメント産業などの市場構造を分析し、モデルの産業内成長の異質性との認識の整合性を吟味検証する必要があるだろう。(3)Settepanellaの研究協力を得て、計測に利用している数学モデルの整合性を吟味検証する。(1)-(3)の議論をスムースに行うため、研究協力者と適宜ワークショップを開催する。以上の議論の結果に基づき、論文作成を準備する。
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Research Products
(3 results)