2018 Fiscal Year Annual Research Report
Optimal design of energy absorbers in seismic response control of structures considering epistemic uncertainties
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18F18761
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
五十子 幸樹 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (20521983)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LI DAWEI 東北大学, 災害科学国際研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2018-11-09 – 2021-03-31
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Keywords | 認識論的不確定性 / 偶然的不確定性 / eddy current damper / inerter |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,構造物の地震時応答制御に用いられるエネルギー吸収デバイスが有する不確定性を定量的に明らかにするための資料収集と,実験計画を実施した.既存の資料としては,同調粘性マスダンパーと呼ばれるエネルギー吸収装置を用いた建物(東京赤坂インターシティ)の施工時に行われた支持部材剛性計測試験の資料を得た.実験については,回転慣性質量を利用したinerterと,eddy current による減衰効果を組み合わせたinerter-eddy current damper を対象として調べることとした.まず,実験の準備として,当該ダンパーの見掛け質量(inertance)と減衰特性をモデル化する.見掛け質量については,錘に用いる伝導体の密度と寸法から容易に計算することができる.減衰特性についてはRussel and Norsworthy (1958)の方法を基本として静電磁気学的アプローチで簡易に計算する方法を検討し,簡易評価式を提案した.ここで提案した簡易式の精度は,東北工業大学の振動台を用いた振動実験により検証している.得られた成果は,日本建築学会東北支部研究報告集会に英文論文として投稿し,これを更に発展させた内容を日本建築学会大会学術講演梗概集に英文で投稿した.発表はそれぞれ2019年6月と9月に行う予定となっている.ダンパー特性に関し,実験で得られたデータと簡易評価法で得られるデータの差異は,試験体に用いた材料そのもののばらつき即ち偶然的不確定性と,モデル化精度に関わる認識論的不確定性に起因しているので,今後,データをさらに蓄積して統計的な検討を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は,構造物の地震時応答制御に用いられるエネルギー吸収デバイスが有する不確定性を定量的に明らかにするための資料収集として同調粘性マスダンパーと呼ばれるエネルギー吸収装置を用いた建物(東京赤坂インターシティ)の施工時に行われた支持部材剛性計測試験の資料を収集し,統計的に整理した.ただし,サンプル数が限られるため,統計的不確定性を有することが明らかである.そこで,縮小試験体を用いた実験により多くのサンプルを得ることを考えた.試験体としては,回転慣性質量を利用したinerterと,eddy current による減衰効果を組み合わせたinerter-eddy current damper を対象として調べた.まず,実験の準備として,当該ダンパーの見掛け質量(inertance)と減衰特性をモデル化した.見掛け質量については,錘に用いる伝導体の密度と寸法から計算した.減衰特性についてはRussel and Norsworthy (1958)の方法を基本として静電磁気学的アプローチで簡易に計算する方法を検討し,簡易評価式を提案した.一方で,東北工業大学の振動台を用いた振動実験によりデータを収集しており,簡易評価モデルと実験データの差異からダンパーモデルの認識論的不確定性に関する統計データを得た.これにより,今後認識論的不確定性を考慮した最適設計手法を構築するための基礎データ収集の準備が整ったと考えている.Inerter- eddy current damper では永久磁石の数や,伝導体との間隔を調整することで減衰性能を容易に変化させられるので,様々な条件に対する計測ばらつきデータを多数収集することが容易である,次年度以降,理論構築のための資料を収集を実施する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに,既往研究におけるエネギー吸収デバイスのばらつきデータ(偶然的不確定性に関するデータ)の収集が完了している.得られたデータは実建物のデータであって大変貴重なものであるが,統計的処理を行うためにはサンプル数が十分とは言えない,すなわち統計的不確定性を解消するには不十分である.今後,十分なサンプル数の資料を得るために縮小試験体を用いた実験によりデータを収集する.平成30年度は,共同研究先の中国・同済大学が保有するinerter-eddy current damper縮小試験たいを用いてデータを収集し,簡易特性評価法との突き合わせを行って提案手法が概ね良好に機能することを確認したので,2019年度は,ダンパー特性を変化させることが可能な縮小試験体を製作して,様々な条件下で実験を実施し,データを収集する予定である.実験は東北大学が保有する大型振動台をアクチュエータとして用いて実施する.得られたデータについて統計的な処理を行い,提案最適設計法構築のためのインターバル・データを作成する.研究課題の期間の後半は,インターバル・データの解析から得られたデータを基に,最適設計目的関数のsurrogate model (応答局面)をkriging 補間法などに基づいて構築する.Surrogate modelが完成すれば,その後の最適化処理は既往のSequential Quadratic Programming等を提案手法に組み合わせることで認識論的不確定性を考慮した最適解を求めることが可能となる見込みである.
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