2019 Fiscal Year Annual Research Report
多環芳香族の精密合成を基盤とする遷移金属とのハイブリッド触媒の創生
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18F18772
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊丹 健一郎 名古屋大学, 理学研究科(WPI), 教授 (80311728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
GONZALEZ MIERA GRECO 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2018-11-09 – 2021-03-31
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Keywords | 環化二量化 / 多環芳香族炭化水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究目標である「配位性を有する多環芳香族の合成」を達成するための戦略を切り替えた。これまで含窒素六員環ヘテロ芳香環の環化二量化に取り組んだが、狙いとする生成物を効率的に得ることは難しかった。その原因が配位性のヘテロ芳香環の存在であり、これが二量化反応を阻害すると想定された。したがって、縮環構造の構築段階では、ヘテロ元素をもたない多環芳香族炭化水素で行い、生成物に対してヘテロ芳香環を付加することを考えた。この観点から本研究では、多環芳香族炭化水素の二量化をまず行い、適宜ヘテロ芳香環を付加することを狙いとした。 はじめに、パラジウム触媒を用いる多環芳香族炭化水素の環化二量化の適用範囲拡大に取り組んだ。特に分子量の大きな基質は溶解性が低く、収率が高くないという問題があった。反応における濃度や触媒量について詳細に検討を行ったところ、良好な収率で反応が進行した。本条件を用いて、適切な位置にベンゼン環が置換したハロゲン化ビアリールに対して、環化二量化の反応を行った。その結果、対応する分子量の大きな環化二量化生成物を良い収率で得ることができた。さらに生成物に対して、酸化的条件下、縮環反応を行うことにより、八員環で連結した完全縮環多環芳香族炭化水素を合成することができた。本生成物は八員環を有する湾曲した構造であり、高い溶解性を有する。本分子の構造は、単結晶X線結晶構造解析により、明らかにすることができた。現在、合成量を増やすと同時に、溶液中の光物性の測定に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
含窒素芳香環に適用はできていないが、新しい巨大多環芳香族炭化水素の合成を達成している。触媒創生の基盤となりうる分子であり、今後の発展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の知見を引き継ぎ、検討を行なっていく。 これまでの研究によって、溶解性の高い巨大多環芳香族炭化水素の合成を達成した。この分子に適切なヘテロ元素を付与することで触媒配位子となりうる。 分子合成においては、収率などの効率に改善の余地が残っており、重点的に検討を行う。
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