2018 Fiscal Year Annual Research Report
南極堆積物の宇宙線生成核種を使った古環境復元に関する研究
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18F18791
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横山 祐典 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (10359648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SPROSON ADAM 東京大学, 大気海洋研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2018-11-09 – 2021-03-31
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Keywords | 南極 |
Outline of Annual Research Achievements |
南極氷床は巨大な淡水の貯蔵庫としてだけではなく、その流動に伴い基底の岩石を侵食し堆積物を海洋にもたらすことにより、風化作用という側面で地球の炭素循環に寄与していると考えられる。しかしそれらの時間的または空間的な高精度復元は行われてきていないため、本研究ではまずその変化を追跡できるトレーサーの開発を行なった。対象とするのは氷床の流動によってもたらされた堆積物試料であり、それらに存在する宇宙線生成核種である10Beを分析する。存在度が極めて低い同位体であるため、化学分析による前処理が重要であるため、まずはその手法の開発を行なった。既報のクリーニング方法では対処できなかった安定同位体(9Be)の効率的な分取法もあわせて開発することにより、より詳細な氷床による浸食作用の追跡が可能となった。堆積物試料の分解や酸による融解、蒸発乾固に使うホットプレートの温度の均質化を進めるための装置開発などを進め、加速器質量分析装置に供する前の前処理の部分の効率化が飛躍的に進んだ。また9Beの分析には誘導プラズマ質量分析装置を用いるが、これまでの方法では分析精度が悪く結果的に得られる10Beとの比にも影響を及ぼすことがわかっていた。したがって、セクター型の高精度質量分析を用いた分析を行うことにした。分析のための装置の設定などについて基礎実験を繰り返し、極めて微量の分析でも高精度で実施できる手法を開発するに至った。今後の分析にはこの9Beの分析法を用いることで、微量の9Beの分析にも対応できる体制が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
加速器質量分析装置の静電加速器部分や絶縁ガス循環のための大型ポンプの故障など多くのトラブルがあったにも関わらず、並行して進めた化学処理法の開発がうまく進み、分析法のルーチンでの進行が可能になったため、今後の分析のスピードアップが期待できるため、概ね順調に研究が進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終氷期の終焉によって融解した東南極氷床がかつて存在した地域には、氷床荷重の解放に伴うアイソスタシーによって引き起こされた地表の隆起により、孤立湖が形成されている。今後はそのうちの一つであり日本の昭和基地の近傍にも位置する丸湾大池の堆積物試料を用いて、10Be/9Beの時系列復元を行い、この地域での浸食作用の変遷と環境変化との関係について議論できるようにする。
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