2018 Fiscal Year Annual Research Report
Study of the nuclear structure of 25O through charge-exchange reactions with an active target
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18F18795
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
櫻井 博儀 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 室長 (70251395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MAUSS BENOIT 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2018-11-09 – 2021-03-31
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Keywords | 不安定核 / Time Projection Chamber / アクティブ標的 / 荷電交換反応 / 欠損質量分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子核は、核子数が「魔法数」を満たすと安定化する。魔法数は核構造を統べる最も基本的な秩序である。近年の研究により、放射性同位体は、地球上の長寿命核とは異なる魔法数に従うことがわかってきた。本研究では、新魔法数が創生する新秩序を理解するために、代表的な新魔法数16であるのギャップ・エネルギーを定量的に評価することを目指す。そのために、非束縛核25Oの共鳴状態を、重陽子標的の荷電交換反応により探索する。荷電交換後の陽子を精度よく測定するために、Time Projection Chamber (TPC)という軌跡測定用ガス検出器を開発する。 19年2月に、放射線医学総合研究所重イオン加速器施設HIMACにおいて、TPCのテスト実験を行った。本研究で使用する検出器は、重陽子ガスで動作する特殊なTPCである。軌跡測定用のガスを、同時に重陽子反応標的として用いることで、標的中での軌跡とエネルギー損失を逐次記録し、分解能の低下を防ぐ。このTPCを動作させるには、荷電粒子の軌跡測定としての特性と反応標的としての特性を両立するように、動作パラメータ(ガス圧力、電子輸送速度、電子増幅率など)を調整しなければならない。テスト実験では、大強度の安定核ゼノン・ビームを用いて重陽子散乱を測定した。TPCと電子回路を安定的に5日間動作させることに成功した。また、ガス・パラメータを最適化することができた。測定を通して、次のような問題点が見つかった。(1)電子増幅領域で発生した電離イオンが電子ドリフト領域に逆流することにより、ドリフト電場が擾乱されていることがわかった。(2)角度分布を後方角度まで測定するには、有感領域を透過する高エネルギー重陽子を検出することが重要であることがわかった。2019年度は、これらの問題を改善することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、重イオン加速器施設HIMACにおいてTime Projection Chamberのテスト実験を行うことができた。大強度の安定核ゼノン・ビームを用いた重陽子散乱を、安定的に5日間測定することに成功した。一方で、本測定を行う前に解決しなければならない改善点が見つかった。一つは、(1)電子増幅領域で生成された電離イオンによる電場の擾乱を抑えることであり、もう一つは(2)有感領域を透過する高エネルギー重陽子を検出することである。2019年度以降の推進方針を、これらの問題を改善する方向で修正する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、不安定核ビームの重陽子散乱実験に向けて、検出器システムの開発を進める。まず放射線医学総合研究所重イオン加速器施設HIMACで行った実験において明らかになった二つの問題点を解決する。(1)電子増幅領域で発生した電離イオンが、電子ドリフト領域へ逆流する現象を抑えるために、電子増幅領域の電場配位の最適化を行う。増幅領域に電極を設置し、電離イオンの流れを妨げる逆電圧を印加する。電離イオンの逆流率を定量的に評価するためのテスト・ベンチを作り、逆流率抑制の効果を評価し、電場配位を最適化する。(2)有感領域を透過する高エネルギー重陽子を検出するために、シリコン半導体検出器を開発する。理化学研究所が所有するシリコン検出器の中から最適な検出器を選定し、テストを行う。TPCのガス中に設置するためのサポートとフィードスルーを開発する。 ハードウェアの開発と並行して、イベント・トリガーの生成方法のスタディを行う。エミッタンスの大きな不安定核ビームを用いる場合、反応イベントを選ぶ効率良いトリガー生成が常に問題となる。19年度上半期に、不安定核ビームを用いた重陽子非弾性散乱実験を、本課題の共同研究グループであるACTARコラボレーションと共にフランスGANIL研究所で行う。この実験は、本課題の目指す実験と、反応と手法の観点で類似している。トリガーの生成する上での改善点を、実際の実験から探る。
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Research Products
(5 results)