2018 Fiscal Year Annual Research Report
コニカルらせん磁性マルチフェロイクスにおける複合ドメインの理解と新規機能性の開拓
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18F18803
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 剛 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (80323525)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
FISCHER JONAS 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2018-11-09 – 2020-03-31
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Keywords | らせん磁性体 / マルチフェロイクス / 電気磁気効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、円錐的ならせん状の磁気秩序構造を示す「コニカルらせん磁性体」における電気磁気結合現象に着目する。同磁性体においては、ときに強磁性と強誘電性が共存するといった「厳密な意味でのマルチフェロイック状態」が実現し、さらに磁化の反転に伴って自発分極が反転するといった稀有な電気磁気結合が発現することが知られている。最近の研究により、同らせん磁性を示すオリビン型Mn酸化物Mn2GeO4においては多様なマルチフェロイックドメインのスイッチに起因した電気磁気結合が生じることが明らかとなったが、コニカルらせん磁性体一般における電気磁気結合にかかわるドメイン応答の理解はまだ十分でない。そこで本研究では、コニカルらせんマルチフェロイクスの物質開発を行い、同物質系を特徴付ける強磁性と強誘電性の共存またその結合現象に着目し、電場・磁場、さらには一軸応力といった非自明な複合ドメイン応答の実現をめざし、同系における電気磁気結合現象の理解を図ることを目的としている。まず研究対象とするコニカルらせん磁性体であるスピネル型Cr酸化物CoCr2O4単結晶試料をキセノンランプ加熱式のフローティングゾーン炉にて育成し、育成した試料の構造及び基礎物性評価を実施した。さらに、磁気測定および電気磁気測定のための測定装置に関して、一軸応力下における測定を可能とするための改良を進めた。また、国内の同分野の情勢を調査するため、国内で開催された学会・研究会に出席した。研究開始が平成31年11月ということもあり、今年度は、まだ成果発表に至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始年度である平成30年度は、まず研究対象とするコニカルらせん磁性体であるスピネル型Cr酸化物CoCr2O4単結晶試料をキセノンランプ加熱式のフローティングゾーン炉にて育成し、その評価および測定に適した試料加工を実施した。また、磁気測定および電気磁気測定のための測定装置に関して、一軸応力下における測定を可能とするための改良を図り、これまで実施したことのない一軸応力下の磁化および電気磁気特性の測定による複合ドメインの新たな制御パラメータの展開をはかった。圧電素子を用いた一軸応力印加の機構を試みたが、対象とする試料の物性に大きく影響を与えるのには不十分であることが明らかとなった。また、国内の同分野の情勢を調査するため、国内で開催された学会・研究会に出席した。研究開始が平成31年11月ということもあり、今年度は、まだ成果発表に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況を踏まえ、今後は測定系の改良を進め、また最適な測定条件(試料サイズ、形状、冷却条件など)の精査を進める予定である。加えて、ドメインの直接観測のための光学測定も実施する。さらに新たなコニカルらせん磁性体の開発を進め、新たに合成した試料に対しても、上述の測定を実施する。これらの結果を総合的に解析、検討し、本研究の目的である新規なコニカルらせんマルチフェロイクスの物質開発、さらには電場・磁場に加えて応力まで含めた非自明な複合ドメイン制御を実現させ、同系における電気磁気結合現象の理解を図る。また、得られた研究成果は国内外の会議において発表する予定である。
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