2018 Fiscal Year Annual Research Report
Exploration and quantum tranport study of topological quantum materials
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18F18804
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
十倉 好紀 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, センター長 (30143382)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HIRSCHBERGER MAXIMILIAN 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2018-11-09 – 2021-03-31
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Keywords | スキルミオン / トポロジカルホール効果 / フラストレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
磁性の実空間トポロジーと結合した電子系を新たに創成することで、巨大な磁気伝導応答を開拓することを目的としている。Gdなどの局在スピンをもつ三角格子やカゴメ格子系を対象として、RKKY相互作用などの電子系が媒介する磁気相互作用がフラストレーションを起こす結晶系を設計・探索・合成する。そこでは、スキルミオン格子など、トポロジカルなスピン構造が出現することが期待され、これに伝導電子が結合すれば、トポロジカルホール効果など特異で巨大な磁気伝導応答が発現することが期待される。 当該年度は、ハイゼンベルグスピンとして働くGdイオンが三角格子あるいはカゴメ格子を組み、かつこれらに伝導電子が結合する系として、Gd2PdSi3(三角格子系)およびGd3Ru4Al12(ブリージングカゴメ格子系)を対象として、チョクラルスキー法とレーザー帯域溶融法によってその良質単結晶を育成することに成功した。RKKY相互作用から期待される変調磁気構造が、multiple-Q構造としてトポロジカルな格子が組む可能性を、軌道放射光を用いた共鳴X線磁気散乱、およびGd同位体置換した結晶の小角中性子散乱を用いて、集中的に探索した結果、triple-Q構造としてのブロッホ型のスキルミオン格子の形成による磁気相を両物質中で発見した。また、そこでのスキルミオン格子相に対応した温度-磁場状態では、ホール角が数%におよぶ巨大なトポロジカルホール効果の存在を確認した。 これらの新しく見い出された、創発磁場による巨大トポロジカル物性応答は、将来のスピントロニクス機能の観点からも重要と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記の局在スピン―伝導電子結合系の格子において予測したどおり、巨大トポロジカルホール効果を発見したが、Gd2PdSi3(三角格子系)については現在、学術誌に論文投稿審査中である。ただし、スキルミオン格子に限らず、その近接した温度-磁場領域に存在する、メロンー半メロン格子など、他の重要なトポロジカル格子相についても同定しつつある。Gd3Ru4Al12(ブリージングカゴメ格子系)についても論文を準備中である。重要なことは、これらのRKKY相互作用、フラストレーション効果を具現する局在スピン―伝導電子結合系が、新規トポロジカル磁性現象の広範な舞台となりえることを確認しつつあることである。
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Strategy for Future Research Activity |
スキルミオン格子やメロン格子が示す、巨大なトポロジカル物性を、極低温、強磁場領域までのホール効果やネルンスト効果、磁気光学効果などの測定を通じて、明らかにしていく予定である。さらに、Gd以外の、磁気異方性の強い希土類元素の選択によって、例えば、ブリージングカゴメ格子での局所的なスピンカイラリティの形成によるトポロジカルホール効果など、フラストレーション系に特徴的なトポロジカル物性に関しても研究計画を拡張発展させて取り組む予定である。
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