2018 Fiscal Year Annual Research Report
Experimental Research on Psychological and Neural Mechanisms of Helping Behaviors in Human Infants
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18F18999
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森口 佑介 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (80546581)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MENG XIANWEI 京都大学, 教育学研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 乳児 / 幼児 / 協力行動 / コミュニケーション / 神経科学 / モチベーション / 評判 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,ヒトの協力的コミュニケーションの動機とその生物学的機構の解明を発達科学のアプローチから試みるものである。より具体的には、以下の2点を検討する。(1)乳児が協力行動のモチベーションは利他的なものか利己的なものか、もしくはその両方かを検証する。(2)乳児における協力行動の神経機構を解明する。平成30年度では、上記の研究目的を達成するために、協力的コミュニケーションに関する理論の整理・検証および、乳児を対象とする神経科学的実験の方法論の確立について検討した。その詳細は下記の三点として報告する。第一、協力的なコミュニケーションが発達初期ではトップダウン的なプロセスによってなりたつか、ボトムアップ的なプロセスによってなりたつか、それともその両方かについて検討した。具体的には、表情模倣を切り口に、乳児が他者に対する協力的なコミュニケーション行動(情動共有)を実験的に検討した。その結果、文脈によって乳児の情動的反応が違うことから、発達初期における協力的コミュニケーションはトップダウン的なプロセスによるものである可能性を示した。この研究成果は、国際誌Infant Behavior and Developmentや、日本発達心理学会などで発表した。第二、良い人であるか悪い人であるかという評判に関する感受性の発達経路を明らかにするために、実際にやり取りを行なった他者に対する幼児(4-6歳)の評価や記憶を検討した。この研究成果は、日本発達心理学会などで発表した。第三、乳児の協力行動について神経科学的に検討する方法論を確立させるために、幼児(5-6歳)を対象に予備的な実験を行った。幼児が他者に対する共有行動を行う際の前頭葉活動について近赤外線分光法を用いて調べた。その結果、共有行動に関わる脳部位の特定ができたと考えられる。この研究成果についてはまとめる途中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度では、本研究の目的を達成するために、協力的コミュニケーションに関する理論の整理・検証および、乳児を対象とする神経科学的実験の方法論の確立について、複数の実験的研究を通して検討することができた。さらに、各研究についてはその成果が見られ、いずれも乳児の協力的なコミュニケーションの動機の解明に大きく貢献すると考えられる。具体的には、乳児期における情動的反応がトップダウン的なプロセスである可能性の解明によって、本研究で注目する、援助行動を含む協力的なコミュニケーションが発達初期においてはトップダウン的属性を持つことがわかった。また、幼児を対象に行った神経科学的研究によって、発達早期における協力行動の生物基盤となる脳部位を部分的に特定することができた。この方法論的な達成も、これから行う乳児を対象とした実験研究に極めて重要だと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度では、まずは前年度の研究成果、具体的には、評判に対する幼児の感受性に関する研究と、幼児の協力行動(分配行動)の神経科学的基盤に関する研究を学術雑誌で論文として発表することを目指す。そして、乳児期における協力行動のモチベーションを行動観察および神経科学的手法を通して検討する予定である。具体的には、平成31年度では研究計画2である「援助場面における乳児の生理学的反応に関する神経心理学的検討」を実施する。この計画は,初期援助行動の動機の説明モデルを構築するために,他者が困っているなどの援助場面における乳児(50名程度)と大人(50名程度)の反応を主に脳報酬系や交感神経系の応答から考察する。
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Research Products
(6 results)