2009 Fiscal Year Annual Research Report
生物の構造色を生み出すナノ周期構造の解明とその創生技術の確立
Project/Area Number |
18GS0205
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡辺 順次 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 教授 (90111666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸木田 雅利 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (30301170)
川内 進 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (80204676)
姜 聲敏 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (00523664)
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Keywords | ナノ構造 / 生物 / ナノプロセッシング / 液晶 / 構造色 |
Research Abstract |
ミヤコアオドウガネとアオドウガネの翅の色は、同じ緑色でも視覚的に異なる。その要因は、それぞれの翅がフラッ型と波うち型のコレステリック(Ch)光反射板であるためであり、後者の波うち層系では、視野角依存性はあまり強くなく、どの方向からでも同一緑色が見える仕組みになっており、そのことが外敵から身を守る保護色として機能していることを示した。また、昆虫のように反射光角度を広げるフィルムを、表面波うち構造を有するフィルム上にCh液晶を塗布作製し、その光学特性を詳細に調査し、さまざまな意匠効果のある反射フィルム(金色などのような混合色の生物メッキフィルム)を作成することが可能となることも示した。 バナナ型液晶は我々らのグループにより発見された液晶である。ベント形状が系の対称性を低下させ、強誘電特特性を生み出すこと述べた最初の論文(J.Mater.Chem.,1996)はサイテンションインデックスが700に達したことからもわかるように、その後次々と興味ある現象や新規な相を提起する出発点となった。今回は、そのうちの一つの相、光学的に等方的であるが大きな旋光能を有するキラルな相に関して、電顕によるモルフォロジー観測を通して、散逸ナノ構造の提案を行った。具体的には、Sm層構造を有するが、分子が層法線に対して傾いているため、ベント部の上部と下部のサイドウイングの充填環境が異なり、それにより生じたひずみをサドル型スプレイ変形により解消した散逸構造である。配向軸が連続的に向きを変えるため、見かけ上無秩序相と同様に複屈折性が消え、分子軸が傾くことにより発現する層キラリティを反映して巨視的変形構造もキラリティを有し、観測結果を満足すると同時に新しいナノ散逸構造のあり方を提起した。 二種類の分子量の異なるポリシラン棒状高分子のブレンド系では、分子量比が1.5~2.5倍程度であると、長い分子が作る層内に短い分子が2分子取り込まれたSm相が形成され、さらに分子量比が3~4と大きくなると2種の高分子A,Bが相分離をしてABABの交互配列したSm層構造となることが認められた。いずれも分子長は数nm~数十nmに変えることができ、多様な屈折率変調を持ったナノ周期構造の創生が可能であること示した。 Ch液晶内に蛍光ダイとしてピレン誘導体を混合し、分布帰還型レーザ発振に成功した。また、ピレンの量子収率(0.85)が高いため、発振閾値が低くなる(従来の1/6:43nJ/pulse)こともあわせて観測し、連続発振を可能とする財料設計に向け一歩前進した。また、Chらせん誘起のためのキラルダイの開発も手がけ、数パーセントの混合で有効なキラル液晶ダイの合成にも成功してきている。
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