Research Abstract |
(1) 研究の背景 : 「高分子とは何か?」という問いに「高分子量の巨大分子」と答えるのが一般的であるが, むしろ「多数の繰り返し単位が配列した巨大分子」と認識するのが本質的である。すなわち, 高分子では, 酵素や遺伝子のように, 分子骨格に沿って多数の官能基・機能基が特定の順序 (シ-クエンス) に配列していることが重要である。ここでは, 繰り返し単位は情報単位(ビット)であり, シ-クエンス制御された機能基の協調で特定の構造と空間形態が一分子で発現し, ここにこそ, 単一分子でも機能しうる「自己完結型分子」(シークエンス高分子)としての高分子の本質とポテンシャルが存在する(右図)。 (2) 学術創成 : 従来の合成高分子では, 繰り返し単位の配列は無秩序に近く, 各単位間の微小な分子間力を多数蓄積した単純な集合体として研究と開発が行われ, これまでにシークエンス制御, とくに自己完結型精密高分子を主題とする研究はほとんど行われていない。これは, シークエンスという視点が希薄であり, これを精密制御しうる重合が未成熟であったためである。シークエンス制御には, 高分子合成を一新する触媒と制御機構など, 有機化学, 超分子科学などが関与し, これらを統合した「新高分子科学」の創成が求められる。 (3) 研究目的 : 本研究は, 上記の背景と認識に基づき, 以下の3課題を設定する。 (A) 重合反応における「精密触媒」開拓 (B) シークエンスの「制御機構」構築 (C) シークエンス高分子の「機能・特性」発現
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