2007 Fiscal Year Annual Research Report
個体レベルにおけるインスリンシグナル伝達ネットワークとその統合
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18GS0317
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
春日 雅人 Kobe University, 医学系研究科, 教授 (50161047)
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Keywords | Dok1 / インスリン抵抗性 / 肥満 / 糖尿病 / TSC2 / 膵β細胞 / インスリン分泌 |
Research Abstract |
インスリン受容体基質の一つであるDok1の機能について解析した。高脂肪食飼育による肥満マウスでは脂肪組織におけるDok1発現が著しく増加し、培養脂肪細胞にDok1を強制発現すると脂肪滴の蓄積が促進された。Dok1遺伝子欠損マウスは高脂肪食飼育で飼育しても肥満や脂肪組織の増大が抑制され、良好な耐糖能を示した。Dok1遺伝子欠損マウスから得た胎児線維芽細胞は、蛋白キナーゼのERKの活性が増強するとともに、脂肪細胞への分化能が低下していた。PPARγは脂肪細胞分化を制御する転写調節因子であるが、その活性はERKによって抑制されることが知られている。PPARγ上のERKによるリン酸化部位を変異させたノックインマウスではDok1遺伝子が欠損しても、肥満に対して抵抗性を示さなかった。以上の結果よりDok1はERKの活性を抑制することにより肥満を促進する作用を持つことが明らかとなった。 インスリンやIGF-1受容体のシグナルは膵β細胞量を正に制御すると考えられている。mTORはインスリンによる蛋白合成の活性化に関与する分子であり、その活性はTSC2によって抑制される。本研究ではβ細胞量制御におけるTSC2の機能を解析した。膵β細胞特異的にTSC2を欠損したマウスのβ細胞では、mTORの下流分子であるp70S6Kや4EBP1の活性やリン酸化が充進し、β細胞のサイズの増加に伴うラ氏島の増大を認めた。膵β細胞特異的TSC2欠損マウスは、若い時期にはインスリン分泌は充進し、血糖値は低下した。ところが、40週齢を超えるとβ細胞数は減少し、血漿インスリン値は低下し、高血糖を呈した。以上の結果から、TSC2はβ細胞量の制御に関して2面的な機能を持つことが明らかとなった。
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Research Products
(3 results)