2007 Fiscal Year Annual Research Report
物理科学を基盤とする人工細胞モデルの構築と機能解析
Project/Area Number |
18GS0421
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉川 研一 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 教授 (80110823)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今中 忠行 立命館大学, 生命科学部, 教授 (30029219)
秋吉 一成 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (90201285)
瀬戸 秀紀 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (60216546)
北畑 裕之 千葉大学, 理学研究科, 講師 (20378532)
稲垣 紫緒 京都大学, 大学院・理学研究科, 研究員 (20452261)
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Keywords | リポソーム / 人工細胞モデル / 物性基礎論 / 生物物理 / 化学物理 / メゾスコピック系 / 自己組織化 |
Research Abstract |
生命の時空間の自己組織化という謎に迫るために、統計物理・非平衡物理・非線形科学などの物理科学方法論や手法を発展的に適用しながら、エネルギーや物質の流れのなかでの自律的システムとして生命を捉えることを目的とする。本研究においては、モデル細胞の非平衡条件下での振る舞いを明らかにするこを通して、生命現象の本質に迫る。具体的には次の3つの視点から研究を進めてきた。1)D1Aの高次構造転移による遺伝子群の活性のon/offスイッチングを実空間上の実験を通して実証し、細胞内での自律的な遺伝子制御のメカニズムの解明を目指す。2)リン脂質多重層から自発的に細胞サイズの小胞が生成する機構を明らかにするとともに、小胞内での転写・発現反応の加速のメカニズムを解明する。3)長鎖D1Aの高次構造転移と生化学反応のネットワークからなる、生命現象の階層的システムとしての特質を究明する。その結果、次にあげるような成果が得られた。 ・油中の細胞サイズ液滴中でアクチンの重合反応を行うことに成功した。アクチン繊維の太さによって、液滴の界面に分布する場合と、液滴内部に剛直に存在する場合があることを見出し、そのメカニズムに関して解析した。 ・油中の微小水滴をレーザー場、あるいは、重力により油水界面を通過させることによってリポソームを形成する、また、逆に水溶液中のリポソームを油水界面を通過させることによって、微小液滴(エマルジョン)を形成することを見出した。 ・長鎖D1Aは多価カチオンにより凝縮構造をとることが知られている。さらに多価のカチオンの場合にどうなるのかという問題意識のもと、ポリ-L-リシンを用いてD1Aの凝縮に対する影響を調べた。その結果、重合度が大きくなるにつれ、転移が連続的になることが明らかになった。 ・時分割X線小角散乱を用いることにより、基板上に積層したリン脂質膜から細胞サイズ小胞が形成されるプロセスを明らかにし、)okker-3lanck方程式を用いて、観測されたプロセスを非平衡論的に議論することで、本質的にこの自己組織化の過程をきめている物理量のひとつとして、膜の曲げ弾性に依存した波打ちダイナミクスが重要であることを示唆した。更に、繰り越した研究によってこのメカニズムの詳細を実験で確認することができた。
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Research Products
(27 results)