2008 Fiscal Year Annual Research Report
物理科学を基盤とする人工細胞モデルの構築と機能解析
Project/Area Number |
18GS0421
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉川 研一 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 教授 (80110823)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今中 忠行 立命館大学, 生命科学部, 教授 (30029219)
秋吉 一成 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (90201285)
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Keywords | リポソーム / 人工細胞モデル / 物性基礎論 / 生物物理 / 化学物理 / 自己組織化 |
Research Abstract |
モデル細胞の非平衡条件下での振る舞いを明らかにすることを通して、生命現象の本質に迫る。そのため、具体的には次の3つの視点から研究を進めている。1)「長鎖DNAが不連続な折り畳み転移を示す」という結果を基盤として、DNAの高次構造転移による遺伝子群の活性のon/offスイッチングを実空間上の実験を通して実証する。これにより細胞内での自律的な遺伝子制御のメカニズムの解明を目指す。2)リン脂質多重層から自発的に細胞サイズの小胞が生成する機構を明らかにするとともに、モデル小胞内での転写・発現反応の加速のメカニズムを解明する。3)長鎖DNAの高次構造転移と生化学反応のネットワークからなる、生命現象の階層的システムとしての特質を究明する。以上3つの課題を総合して、細胞分化や形態形成など、生命体構築の基本原理に迫る。平成20年度において、申請当初の予想以上の成果があった。成果の一部を以下に示す。 ○長鎖DNAの非特異的な環境パラメータによる折り畳み転移に関して、1分子計測を主とした系統的な実験をすすめた。特に、1価や2価の陽イオンや1価の陰イオンのDNA折り畳み転移に対する効果を解明することに成功した。 ○大腸菌細胞から低侵襲な手法である光ピンセットによりゲノムを取り出した後、物理的に引き延ばすことによって高次構造を解きほぐすことに成功した。その結果、対数増殖期と定常期の細胞でゲノムの広がり方(ミクロ相分離構造)が異なる事を動的に明らかにした。 ○T.kodakaraensis無細胞抽出液(S30画分)を作製し、これを用いてGFPの合成反応に成功した。これにより、生物の最小単位である超好熱菌を用いた人工細胞モデル創製が前進した。 ○生細胞とギャップジャンクションを形成するタンパク質であるコネキシンをリポソーム膜表面に発現させることに成功した。この方法で、リポソームに封入した親水性ペプチドを培養細胞に導入し、培養細胞の遺伝子発現を抑制することにも成功した。この結果は、これは哺乳動物の膜タンパク質がリポソームで発現・機能化されたのみならず、人工細胞モデルが生きた細胞との間で物質の授受を行った世界初の例である。
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Research Products
(43 results)