2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H00313
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
軽込 勉 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 技術専門職員
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Project Period (FY) |
2018
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Keywords | 生息域外保全 / ヒメコマツ / 発芽試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
○研究目的 本研究では絶滅が危惧されている房総丘陵のヒメコマツ保全のため、千葉県外(秩父)へ生息域外保全をおこなった実生苗より生産された種子に着目し、発芽能力、成長量、および幼樹の生長量から生息域外保全の有効性について検証をおこなった。 ○研究方法 ・発芽試験 : 蒔き付けは4月におこない房総(札郷畑)と秩父(影森畑)で育苗した。種子は房総で育苗した個体と生息域外保全(秩父)し養苗していた各5個体から採取した種子を使用した。発芽試験はプランターに苗畑の土を敷きつめ床とし、蒔き付け後、約1cmの覆土をし寒冷紗で覆った。6~12月に発芽状況を確認し、発芽能力と生存率を算出した。 ・幼樹の成長試験 : 房総で育苗していた4年生苗木3家系を、房総(札郷畑)と秩父(影森畑)へ移動し、4~12月で根元径、苗長を計測し、地域間での成長の比較をおこなった。 ○研究成果 実験の結果、発芽試験では、7月時点で概ね発芽が出そろい、地域間および産地での発芽時期については大差がみられなかった。発芽率は秩父産の種子の方が高く、札郷、影森どちらの地方でも50%を超えていた。一方、房総の種子は札郷の方が10%程高かった。また、発芽後の生存率については、房総産種子は札郷、影森とも約10%程度低下した。一方秩父産種子は札郷、影森とも約3%程の低下で房総産にくらべ小さかった。幼樹の成長試験では、札郷、影森ともに8月から頂芽の成長がはじまっており、成長時期の地域間の差はあまりみられなかった。また、成長量については、苗長、根元径ともに札郷の方が成長していたが、差はごくわずかであった。 以上の結果から房総丘陵ヒメコマツの生息域外保全をおこなうことにより、種子の発芽能力および成長量が向上する可能性が示唆された。しかし、種子の発芽率は休眠期間および遺伝的要因等の影響も大きいため、今後それらの要因も含め考察する必要があるだろう。
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