2018 Fiscal Year Annual Research Report
甲殻類端脚目がもつ2つの視物質発色団の環境依存性の生物学的意義
Project/Area Number |
18H00345
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
外山 美奈 浜松医科大学, 医学部, 技術専門職員
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Project Period (FY) |
2018
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Keywords | 甲殻類 / 視物質発色団 / 3-hydroxyretinal |
Outline of Annual Research Achievements |
私は、これまで昆虫特有とされていた視物質発色団A3(3-hydroxyretinal)が、地中海棲の甲殻亜門端脚目のハマトビムシTalitrus saltator複眼に存在することを発見した。様々な光環境に棲息する甲殻亜門の発色団を解析し、端脚目だけがA1(retinal)またはA3をもち、他の甲殻類はA1のみをもつことが分かった。また発色団に棲息域的な偏りがあり、海棲のものはA1、陸棲のものはA3をもち、海岸域のハマトビムシがA1とA3を含有していた。昆虫もA1とA3をもつ事から、視物質オプシンの分子系統解析をすると、端脚目と昆虫はそれぞれ独立したグループであり、発色団関連遺伝子群とオプシン関連遺伝子群が独立して進化したことが示唆された。ハマトビムシを用いた光順応実験でA1をもつ視物質の吸収極大は紫外部に、A3をもつ視物質のそれは可視光域にある事がわかったが、紫外光の届かない海水域に棲息する種がA1だけをもち、紫外光の多い陸上に可視光域に吸収極大があるA3のみをもつ種が存在することに矛盾が生じる。そこで、光環境の異なる季節と棲息域で採集したヨコエビ類の複眼のスペクトル特性に違いがあるかを、発色団および視細胞のスペクトル特性に注目して実験を行った。異なる季節として夏と冬に、異なる棲息地でヨコエビを採集し解析を行った。 1. 顕微分光装置を用い、クォーツスライドグラスの上に視細胞の固定標本を置き、クォーツカバーグラスで押し潰し、光受容部ラブドームの吸収スペクトルを10回ずつ測定することで、視物質の光吸収特性を調べた。すると、夏と冬での吸収スペクトルおよびピークの違いは明瞭ではないことが分かった。また、2. ERG法で暗順応したハマトビムシの複眼の光スペクトル応答曲線を夏と冬で比較したところ明瞭な違いはなかった。これらの結果から、夏と冬での光環境スペクトル変化に対応した視物質変化は認められず、冬期の活動量の減少と関係している可能性が暗示された。今後は、視物質発色団の夏と冬の含有量を比較する予定である。
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