2018 Fiscal Year Annual Research Report
定量的標的プロテオミクスを用いた迅速かつ簡便な血中ニボルマブ絶対濃度測定法の開発
Project/Area Number |
18H00408
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
阿部 一樹 浜松医科大学, 医学部附属病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2018
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Keywords | 抗体医薬品 / LC-MS/MS / プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
既存の抗体医薬品分析法では、大量に生成されるペプチド断片によるイオンサプレッションや、抗体医薬品のペプチド消化に長時間かかることが問題となっている。これらの問題によって、LC-MS/MS法を用いた抗体医薬品の臨床応用が困難となっている。そこで本研究では、IgG精製を利用した前処理法によるイオンサプレッションの軽減と、固相化トリプシンを用いた迅速酵素消化による消化時間の短縮を試み、臨床応用可能なLC-MS/MS法によるニボルマブの血中濃度測定法を構築することを目的とした。 目的達成のため、まず、質量分析計を用いてニボルマブ特有のペプチド(サロゲートペプチド)の同定、並びにその検出条件を決定した。次に、高速液体クロマトグラフィーを用いてサロゲートペプチドの分離条件を決定した。そして、サロゲートペプチドに対する前処理条件、すなわち、固相抽出条件、ニボルマブの酵素消化条件、血清のIgG精製条件を決定した。固相抽出にはOasis HLBを用いることで、疎水性相互作用を利用したペプチドの抽出が可能であった。ニボルマブの酵素消化にMonoSpin Trypsinを用いることで、20分以内に酵素消化が可能であった。血清のIgG精製にMonoSpin ProGを用いることでイオンサプレッションが軽減し、低濃度域まで測定が可能となった。分析法バリデーションを行った結果、本分析法が妥当と判断できたため、ニボルマブによる治療を受けている患者の血清中ニボルマブ濃度を測定したところ、本分析法が臨床応用可能であることが分かった。 本研究では、IgG精製を利用することでイオンサプレッションを軽減させ、固相化トリプシンを用いることで迅速消化を可能とした。また、本測定法が臨床応用可能であることも示された。従って、本研究により定量的標的プロテオミクスを用いた迅速かつ簡便な血中ニボルマブ絶対濃度測定法が構築された。本測定法は他の抗体医薬品分析にも応用可能と考えられた。
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