2018 Fiscal Year Annual Research Report
ホスファチジルグルコシド(PtdGlc)による好中球分化誘導機構について
Project/Area Number |
18H00451
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
横山 紀子 順天堂大学, 環境医学研究所, 研究支援者
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Project Period (FY) |
2018
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Keywords | ホスファチジルグルコシド / 分化 / Kras |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞であるHL-60はDMSOやPtdGlcで好中球系の細胞へと分化させることができる。好中球分化機構が阻害されることがAMLの発症に関与している。HL-60細胞をDMSO処理し好中球系細胞に分化させ抗PtdGlc抗体で刺激後、脂質マイクロドメインからの免疫沈降物を解析し、好中球分化に重要な役割を担っていると予想される分子群を同定した。Krasが分化誘導促進に関わる分子として同定された。Rasはがん遺伝子として理解されており、Krasの変異体は急性骨髄性白血病患者に多く検出されている。しかしRasは正常の細胞にも発現しており、ガン抑制因子としての働きもある。本課題では、HL-60細胞の分化誘導にKras及びWntシグナルが関与しているかを検討した。その結果KrasがWntシグナル経路とクロストークして分化誘導を引き起こすことが明白となった。 1. HL-60の分化に伴い、Krasの活性は上昇し形質膜への移行が認められた。 2. KrasをノックダウンまたはKras阻害剤で処理すると、分化は抑制を受けた。 3. Wntシグナル経路のキー分子であるβ-cateninの阻害は分化を抑制した。また分化はWntシグナル下流分子(β-catenin, LEF/TCF)が核内に蓄積する事で促進された。 4. Krasノックダウンで分化及びWntシグナルの指標であるLEF/TCF転写活性が抑制されたため、Wnt経路がKrasの下流に位置することが判明した。 本研究によるHL-60細胞の分化機構の解明は、好中球分化を促進しAML細胞の増殖をおさえることを標的とした急性骨髄性白血病の新規治療の創薬開発につながる第一歩となると考えられた。
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