2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18H00618
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中島 隆博 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (20237267)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
園田 茂人 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (10206683)
小野塚 知二 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (40194609)
鍾 以江 東京大学, 東洋文化研究所, 准教授 (40735586)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 東京学派 / 帝国の哲学 / 近代化論 / 宗教概念 / 経済学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は3回のワークショップ、5回の研究会と1回の国際シンポジウムを開催した。本科研は「東京学派」という発見的な概念を設定するものなので、初年度である本年度は、各分野においてこの概念がいかなる可能性をもつかを中心に議論・検討した。 国際シンポジウムはInternational Symposium Global Asia in Interdisciplinary Perspectives: Sustainability, Security and Governanceと題して、シンガポールの南洋理工大学で行ったものである。5回の研究会は哲学、社会学、経済学において顔合わせとブレーンストーミングを兼ねて行ったものである。それに対してワークショップは公開で、以下の通り。 第1回は「アジアの概念化」と題して、磯前順一氏と松田利彦氏を国際日本文化研究センターから招き、具体的な研究者を題材にして発表いただいた。東京大学を中心とした学知の形成と流通においてアジアがいかに言説化されたかをめぐって、植民地である京城帝国大学の状況を視野に入れつつ討論をおこなった 第2回は「中国哲学をめぐって」と題して、「東京大学中国哲学の歴史的背景とその意義」を討論のテーマに設定した。佐藤将之氏(台湾大学)・小島毅氏(東大)・石井剛氏(東大)の発表により、東京大学の創設以来、日本の哲学者と中国の哲学者とのあいだに活発な影響関係があったことが新たな論点や事実関係とともに提示された。 第3回は「学派」としての実態の如何を討論するために、「日本哲学と東京大学の哲学」との題のもと、トマス・カスリス氏(オハイオ州立大学特別名誉教授)と小林康夫氏(東大名誉教授)に発表を依頼した。京都学派との比較や「駒場カルテット」に関する発表・討論をつうじて、「東京学派」を「学派」と呼ぶことの意味内容・可能性・限界について議論することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者からの「東京学派」という問題提起に対して、3回のワークショップと5回の研究会そして1回の国際シンポジウムをつうじて、多種多様な分野の研究者から情報提供や論点提示を得ることができた。もちろんこの挑発的な概念に対して批判も寄せられたが、これも次年度以降に生かせるものであった。 毎回のワークショップには東京大学内外から多数の参加者に恵まれ、本テーマの重要性や注目度の高さを確認できた。とりわけ第3回のワークショップは幸い、科研費基盤研究(B)「『哲学雑誌』のアーカイヴ化を基礎とした近代日本哲学の成立と展開に関する分析的研究」(研究代表:鈴木泉)との共催とすることができ、そのおかげで、人的交流を加速することができた。研究プラットフォーム形成という本科研の目的に照らしても上々の初年度となった。 以上のことから、科研の初年度である本年度としては、「おおむね順調に進展している」と判断して差し支えないであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度のワークショップでの討論や問題提起を踏まえて、次年度は「東京学派」の内実を具体化することを目指す。それにともない、「東京学派」に関する研究の途中経過的な文章を作成しはじめることで、研究期間の後半の方向性を明確なものとする。さらに、本年度は哲学と宗教での「東京学派」に議論が集中したきらいがあるため、次年度は社会学、経済学、そして歴史学や文学研究からの視点を重視したいと考えている。 以上の目的のために、以下3名を新たに研究分担者にくわえることとした。大木康氏(東大東洋文化研究所教授、中国近世(明清)史)、馬場紀寿氏(東大東洋文化研究所教授、古代インド仏教史)、松方冬子氏(東大史料編纂所准教授、日本近世史・対外関係史)。いずれの研究者も専門分野の学史に詳しいだけでなく、哲学や理論に対する造詣が深いので、本科研での討論を深化してくれることが見込める。 次年度は新メンバーをふくめた研究会を早期に実施し、本科研の方針を説明する。その後は、国際シンポジウムを開催し、より領域横断的な研究活動を行う。
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Remarks |
(東京大学「国際総合日本学ネットワーク」ホームページ内に設置し、研究会ごとに開催告知と内容報告を公開。)
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