2018 Fiscal Year Annual Research Report
ナポリの劇場(音楽・演劇)史構築にむけての、18世紀公証人文書史料の重点調査
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18H00625
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山田 高誌 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (10580665)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナポリ / 劇場 / 音楽 / 興行 / 公証人 / オペラ / 歌手 / 作曲家 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、6月の現地調査において、今後調査すべき台帳カタログを複写し、とりわけ喜劇台本作家としても活躍した公証人ピエトロ・トリンケーラの公証史料(1740年代)、劇場関連の契約を多く担当したガエターノ・マンドゥーカの公証史料(1750-60年代)の調査を行った。その結果、トリンケーラはほとんど劇場関係の仕事を行っていないことが分かったため、今後の調査で省くこととするが、マンドゥーカについては先代や一族も劇場と関わりが深いことが明らかとなり、専門的な調査対象と確定することができた。 発掘された史料の中で、例えば、ナポリ王国内の音楽家の移動と音楽拠点の形成を明らかにする様々な史料群は興味深く、王国首都のナポリで各都市や各施設の代理人が音楽家や作曲家を採用し、その後地方に送られるという"リクルート・システム”があったことが確認された。具体的には、ナポリ以外のナポリ王国内各都市(トラーニ、フォッジャ、パレルモ)や離宮(ポルティチ、カゼルタ)の音楽、オペラの実態を解明できる手がかりになると考え、現在論文作成を行っているが、これは現地でも研究が進んでいない南イタリア全体の音楽流通システム(楽譜、音楽家)を明らかにする取り組みとして国際的に位置づけられることになる成果と考えられる。 また、1820年に長崎・出島で上演された日本初のオペラ作曲家エジディオ・ドゥーニが、本研究テーマと重なる地域、時代の作曲家であり、その生地マテーラで行われる「ドゥーニに関する国際シンポジウム」において、江戸期の日本でのオペラ上演についての報告を行った。さらには、来年度同マテーラ音楽院で開催される国際シンポジウムの企画者の一人として現地研究者たちと交流を進めている。 その他、日本におけるイタリアオペラの研究拠点とすべく資料の拡充を断続的に図っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、主たる研究となるナポリ文書館においては短期の調査を実施するに留まっているが、2019年度マテーラ音楽院で開催される国際学会の企画委員として選ばれ、招待講演を行うなど、研究を展開するにあたり必要となるイタリアでのネットワークの構築を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度には7月、10月、3月と断続的にナポリ文書館で発掘調査を進めるほか、同期間中イタリア音楽学会全国大会(マテーラ音楽院)での発表や、査読誌投稿を目指す。 とりわけ来年度2020年には、日本において世俗的西洋音楽(出島でのオペラ)が受容され200周年となるが、最初に紹介された西洋人作曲家が、本研究テーマで明らかにしようとしている地域、時代の作曲家であるエジディオ・ドゥーニというマテーラ出身のナポリ派作曲家のため、本研究のアウトリーチと広がりという意味において、日本において何らかの国際的シンポジウム、演奏企画を行うべく調整を進めるものとする。
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Research Products
(4 results)