2019 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative Art Historical Studies on Medieval Treasures
Project/Area Number |
18H00629
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
秋山 聰 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (50293113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板倉 聖哲 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (00242074)
塚本 麿充 東京大学, 東洋文化研究所, 准教授 (00416265)
高岸 輝 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (80416263)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 美術史 / 宝物 / 比較美術史 / コレクション / 聖遺物 / 聖地 / 宝蔵 |
Outline of Annual Research Achievements |
西洋美術史班(秋山)は、7月にジュネ―ウ大学ダリオ・ガンボーニ教授を招き、東京大学において講演と質疑を行い、前近代における宝物と造形との相関性について参加した研究者を交えて議論し、宝物概念についての国際相互比較に有益な新知見を数多獲得することができた。比較美術史班(秋山及び研究協力者の松﨑照明)は、9月にこれまでの成果の一端を、フィレンツェで開催された国際美術史学会(CIHA)世界大会の第一セクションにおいて、秋山が共同座長基調発表として、松﨑が中世日本における山岳寺院や宝蔵について研究発表として披歴し、現地マスコミからの取材を受ける等一定の反響を呼んだ。更に秋山は、11月に早稲田大学での国際研究集会、12月に青山学院でのシンポジウム、また松﨑とともに1月に東京大学でのフォーラムにおいて、比較美術史に関わる成果を口頭発表した。なお、秋山は物質性の希薄な宝物としての「聖なる寸法」について論文にまとめ、松﨑は研究成果の一部を活用した『山に立つ神と仏』(2020年)を上梓した。東洋美術史班(板倉・塚本)は、絵画に重点をおきつつ、日本および中国の宝物コレクションについての調査を行うと共に、これまでの成果の論文発表を積極的に行った。日本美術史班(髙岸)は日本中世(平安~戦国時代)の政権や寺社による絵画(絵巻・屏風・仏画・肖像画)の制作・コレクション・贈与・奉納の実態について、広く作品や資料を渉猟・調査し、その成果の一部を『中世やまと絵史論』(2020年)において提示した。また、中世の天皇による美術工芸品や楽器の制作について、古代天皇家の宝蔵の所蔵品を転写した例を複数調べ、相互の密接な関係について口頭発表を行った。なお、3月に比較美術史班と東洋美術史班は、本研究課題に関わる二つの国際研究集会をそれぞれジュネーヴ、東京において企画していたが、covid-19禍の影響により延期となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者が副研究科長職にあり、とりわけ海外活動が一定の制限を受けている状況ではあったが、調査および成果発表両方に関して、3回の海外出張が認められ、概ね当初の予定どおりに研究が遂行されているものと思われる。ただ、covid-19蔓延の影響により、年度後半においては、海外出張が中止のやむなきに至り、国内調査の比重が当初の予定より増加した。
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Strategy for Future Research Activity |
covid-19感染の今後の推移が見えない中で、海外出張が困難な場合、次善の策として国内調査を充実させる方策を練っている。本研究の究極の目的が、比較宗教美術史研究の拡充にある点に鑑みれば、外国研究と自国研究の比率が多少変化しても、研究内容にはそれほど大きな影響を及ぼすことはないものと思われる。とはいえ、国内外における国際研究集会の開催を可能な限り模索する所存である。
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