2018 Fiscal Year Annual Research Report
ビザンティンと中世イタリアの聖堂装飾プログラム比較に基づく相互影響関係の分析
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18H00632
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
益田 朋幸 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70257236)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 裕文 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (40537875)
児嶋 由枝 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70349017)
武田 一文 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (90801796)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ビザンティン美術 / 中世イタリア美術 / ロマネスク美術 / ゴシック美術 / 西洋中世美術 / キリスト教図像学 / 聖堂装飾プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
夏期に南イタリア及びカッパドキアの聖堂調査を行った。南イタリアにおいて特に重要であったのは、Squinzano郊外S.Maria a Cerrateと、CarpignanoのSS.Cristina e Marinaである。前者はアプシスに「昇天」、身廊西壁に「聖母の眠り」という興味深いプログラムを有する。年代に議論があったが、実見調査によって12世紀末との感触を得た。後者は10世紀の年記を有する基準作例で、アプシスの左右に「受胎告知」を分割して配する最初期の作例となる。キリストのニンブスの十字架に、通常のO ONではなく、ZOE(生命)とPHOS(光)との銘文を有する孤絶した作例である。今後これらの作例を、ビザンティン聖堂装飾プログラムの中に位置づけてゆきたい。 カッパドキアでは、ネヴシェヒル博物館長の全面的な協力を得て、70余りの聖堂壁画の調査をすることができた。同時に館長とは、カッパドキア岩窟聖堂群の直面する崩壊・剥落・観光客による落書き等の喫緊の問題を議論した。今後日本隊が修復・保存の協力をする可能性も見えてきた。 図像学的な問題は多岐に亙るが、例えばギュルシェヒル地区カルスのTaxiarches聖堂では、西壁面「最後に審判」図にキリストを描かず、アプシスのキリストによって代用する、即ち聖堂の三次元空間全体を使って「最後の審判」を実現させる、といった興味深いプログラムを確認した。また同地区アチュック・サライの聖ゲオルギオス聖堂では、アプシスに「昇天」を採用している。これは上述した南伊S.Maria a Cerrateと同じプログラムであり、南伊とカッパドキアの関連性を強く示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
カッパドキア調査において、ネヴシェヒル博物館長(ギョレメ地区を管轄)の全面的な協力が得られ、許可申請の手間が大きく省かれた。同館長は2019年3月に来日し、さらに交流を深めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
イタリアにおいてはプーリア州、バシリカータ州の調査をほぼ終えたので、今後はカンパーニャ州、カラブリア州、シチリア島の調査を進行させたい。カッパドキアにおいては、未踏査の聖堂はまだ多いが、引き続きネヴシェヒル博物館長の協力の下、調査を行う。 ギリシア国内の作例、北マケドニア・セルビアの作例は、未踏のものはないが、再調査を行って、南イタリアやカッパドキアとの関連を詰めてゆく。 さらに視野を広くとって、「中世における巡礼路による図像伝播」の問題も考察することとする。スペイン、サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼路が比較対象となろう。
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Research Products
(4 results)