2019 Fiscal Year Annual Research Report
ビザンティンと中世イタリアの聖堂装飾プログラム比較に基づく相互影響関係の分析
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18H00632
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
益田 朋幸 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70257236)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 裕文 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (40537875)
児嶋 由枝 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70349017)
武田 一文 早稲田大学, 文学学術院, その他(招聘研究員) (90801796)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ビザンティン美術 / キリスト教図像学 / 聖堂装飾プログラム / カッパドキア / 聖山アトス / ミハイルとエウティキオス |
Outline of Annual Research Achievements |
海外調査を積極的に行った。ローマ、南イタリア、サンチャゴ・デ・コンポステラ巡礼路(スペイン)、ペロポネソス半島・キオス島・ナクソス島・カストリア・クレタ島・聖山アトス(ギリシア)等の聖堂装飾を調査した。とりわけて、2019年夏に行ったカッパドキア(トルコ)調査では、本課題に直結する多くの成果を得た。 南イタリアとカッパドキアでは、ビザンティン本土に稀な「キリスト昇天」「変容」をアプシス図像として採用する場合が少なくない。首都コンスタンティノポリス中心のビザンティン美術史観を修正する必要があるだろう。 聖山アトスの政庁カリエスに附属するプロタトン聖堂壁画の修復洗浄作業の結果、画家エウティキオスの署名が発見されたとのニュースを受け、2020年3月に緊急調査を行った。 プロトエピスタティス(大統領に相当)の長老シメオン師の協力の下、プロタトン聖堂聖域の図像を検討した結果、二人組の画家ミハイルとエウティキオスの最初期の作であるパナギア・ペリブレプトス聖堂(オフリド、北マケドニア)の聖域装飾プログラムとの類似が認められた。またテサロニキの聖ディミトリオス聖堂に附属する聖エウティミオス礼拝堂聖域との共通性も明らかになり、ミハイルとエウティキオスという有力な画家の構想が、広くバルカン半島に拡散してゆく経過も追跡することができる。彼らはイタリアの図像の影響を受けている可能性があり、ここからビザンティンとイタリア・ゴシックの相互影響関係を立証することができるかも知れない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2019年度、研究代表者は大学よりサバティカルを得て、研究に専念することができた。ギリシアに在住し、そこを拠点に海外調査を頻繁に行うことができた。ギリシアの研究者から多くの最新情報を得て、またその人脈により、通常調査の困難な聖山アトスでの調査を敢行することもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年3月の聖山アトス調査を最後にして、新型コロナ肺炎拡大のため、ヨーロッパ各国の調査が困難になっている。2020年夏、もしくは2021年春に現地調査が可能かどうか、目下のところ見通せない。海外調査が不可能な場合には、これまでに撮影した写真資料を整理し、研究分担者とも共有した上で、聖堂装飾プログラムの議論を(場合によってはウェブ会議によって)行いたい。
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Research Products
(1 results)