2018 Fiscal Year Annual Research Report
Practical Study of Ecomusicology for Solving Problems of the Sanshin Manufacturer
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18H00637
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Research Institution | Okinawa Prefectural University of Arts |
Principal Investigator |
小西 潤子 沖縄県立芸術大学, 音楽学部, 教授 (70332690)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 三線 / 沖縄 / 楽器製作 / 黒木 / 生態音楽学 / 地域文化 / 伝統工芸品 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、生態音楽学の立場から、関係機関等との双方的なコミュニケーションを行いながら協同して、材料枯渇や製造技術伝承の危機といった沖縄県産三線の製作課題解決を図ることである。初年度の平成30年度は、沖縄県三線製作事業協同組合及びくるちの杜100年プロジェクト in 読谷村実行委員会との連携強化が課題の1つであった。そのため、両事務局と連絡を密にとりながら「三線大学」の視察(6月)、県産三線ブランド化事業委員会会議の聴講(7月、11月)、札幌市での県産三線普及活動の調査(10月)、くるちの杜100年プロジェクトの植樹祭(10月)及びシンポジウムに参加し、沖縄県産三線を取り巻く現状と関連機関の取り組みの実態を把握した。 沖縄県三線製作事業協同組合主催の「三線大学」には、全国からリピーターを含む参加者が製作費、旅費、宿泊費を自己負担して集まり、製作者と交流しながら手作りの三線を完成させていた。この調査の意義は、材料となる黒木の保全に関心をもちうる層として、製作そのものに関心をもつ一般市民がいることがわかったことであった。また、8月にはくるちの杜100年プロジェクトが第40回「サントリー地域文化賞」を受賞し、11月には沖縄県三線製作事業協同組合が推進してきた県産三線の国伝統工芸品指定が叶った。このように、協力機関による取り組みが評価されたことは、今後本研究を推進する上でも重要な背景となった。 これらと並行して、伝統工芸品・福山琴の製作者(6月)、べトナム産三線の販売業者(10月)、ヴァイオリン製作職人への聞き取り調査(10月)をそれぞれ行った。これらにより、沖縄県産三線の製作独自の課題と世界の楽器製作に共有される課題とが明らかになった点で意義深かった。そして、世界の楽器製作現場が抱える課題解決のためのネットワークづくりの重要性が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、①楽器製作事業者の現状と課題把握、②くるちの杜100年プロジェクトin 読谷村実行委員会による生態環境保全活動等の実態調査、③琉球大学農学部造林学研究室との協力関係の構築と情報収集、④学会等での島嶼地域における持続可能な生態環境保全と音楽文化の伝承に関する情報交換を計画した。 ①と②は成果概要で述べた通りの成果となった。③はくるちの杜100年プロジェクトのシンポジウム(10月)において、シンポジストとして生態音楽学的調査の意義を広く一般に周知する機会を得たことをきっかけに、琉球大学農学部造林学研究室との連携を強化することができた。その結果、黒木の保全にとどまらず、亜熱帯島嶼域における森林の維持、再生による音楽文化の持続可能性についての研究展開の可能性が見出された。④は、日本サウンドスケープ協会研究会(5月、12月)、国際小島嶼文化会議(6月:フランス)、日本島嶼学会(9月:東京都神津島)の研究大会において実施した。 以上の理由により、研究計画した通り、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、主として昨年度の継続調査(①楽器製作事業者の現状と課題把握、②くるちの杜100年プロジェクトの生態環境保全活動等の実態調査、③くるちの生態や造林に関する情報収集および沖縄県内における実態調査)を行う。また、④研究会や国際学会等(日本サウンドスケープ協会研究会、ハワイ東西センタ―・シンポジウム、国際伝統音楽学会 ICTM、日本島嶼学会、東洋音楽学会大会)に参加し、本研究について周知するとともにネットワーク構築に向けての準備を進める。
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Research Products
(5 results)