2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H00652
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
諏訪部 浩一 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (60376845)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 和彦 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (10205594)
阿部 公彦 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (30242077)
中嶋 英樹 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (70792422)
木村 明日香 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (70807130)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 小説知 / 物語論 / ジャンル論 / 認知詩学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「小説知」という概念を新たに提唱し、人間が世界をいかに認識するかを文学研究の立場から検討する認知詩学・認知物語論の研究を一歩押し進め、「物語」からは区別され、「近代」に特有の文学形式たる「小説」という観点から、近代人の世界との関わり方をとらえ直すことを目的としている。 「小説知」という新しいコンセプトを広く国内外に訴えるに値する概念とするという、プロジェクト全体の規模を考慮して、初年度は基礎作業として19世紀および20世紀アメリカ小説、19世紀および20世紀イギリス小説、演劇と小説の比較研究を研究代表者・分担者それぞれの担当領域として、関係資料の収集・整理を進めた。また、研究の共通基盤として、認知物語論において「小説知」概念の構築に寄与する国内外の優れた文献を収集・分類し、データベース構築に向けた作業を進めた。とくに、物語論において文学の諸ジャンル・形式が果たす役割の差異を明確にすることを目標に、平成30年9月には英国での文献収集も行っている。 本研究は、こうした基礎作業によってより具体的には(1)他者(読者や世界)との関係の構想、(2)情動の喚起、(3)教育的機能の三つの主題群の解明を目的としている。初年度の成果は多岐にわたるが、共同研究として特筆すべきは、諏訪部、後藤、阿部がフォークナーと日本人作家(横光利一、小島信夫、谷崎潤一郎など)との比較研究によって、近代における「小説知」のあり方を浮かびあがらせたことである。それぞれが扱った差別や主観共有といった問題は、「共同体」と「個人」の相互関係を探求するという点において上記三点のすべてに関わるものであるが、そうした問題意識は、例えば教養小説における「成長」の問題を扱った中嶋の研究や、初期近代演劇に役者の「イメージ」がどう取りこまれているかを考察した木村の研究にも通底している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究プロジェクトの初年度となる本年は、海外の施設も活用しつつ、代表者・分担者それぞれの専門領域に関係した資料収集・整理を中心的におこなった。各個別作家・作品研究というかたちではあるが、こうした収集を基礎とした論考も順次発表している。諸ジャンルの比較を可能にする視座、国家別の議論を展開する視座など、個別研究を統合するための基礎作業が進行中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度にひきつづいて資料収集・分類を継続的におこなうほか、その文献情報を広く共有できるようデータベースを構築し、公開に向けた作業を進める。作成にあたっては、単なる書誌情報の蓄積ではなく、上記本研究がサブテーマと定める三つ主題群のほか、さまざまな関心から利用可能なデータベースとする。研究分担者の二人の所属が変更になったため、実施のペースなどを調整する必要も見込まれるが、意見交換会およびワークショップを開き、個々の研究者の専門的知識を有効に活用していく。
|
Research Products
(21 results)