2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H00663
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
新谷 忠彦 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (90114800)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 敦士 日本医療大学, 保健医療学部, 教授 (20609094)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | タイ文化圏 / カヤン諸語 / カレン語 / モン・クメール語 / パラウク・ワ語 / カノー語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は新型コロナウィルス感染症の世界的な流行により、予定していた海外での現地調査ができなかった点で、本研究課題の遂行に一部支障が生じた。ただ、言語データの整理と公開という主要な目的は、予定していた以上の6言語(うち4言語はこれまで全く知られていなかった未知の言語である)の公開ができ、さらに、これまでどのような言語がどこにあるのかさえ分かっていなかったカヤン系言語について、60程度の言語の対応関係を一冊の書物にまとめることができた。これによって、カレン系言語の声調には、単に、高/低の対立だけではなく、長/短の対立が組み合わさった声調体系を持っていた言語であることが分かった。さらに、カヤン系言語の150程度の村落の言語地図を作成し、これも公開した。これによって、これまで単に「パダウン」とされていた言語には極めて多種多様な言語があることが判明した。また、ミャンマーのカレン州北部のタンダウン地区は政治的・地理的理由から村落の位置と言語の分布状況がほとんど分かっていなかったが、ほぼ25年にわたる調査から、合計296ヵ村のうち3ヵ村を除いてどのような言語が使われているのかが判明し、その言語地図を作成して公開した。こうした2枚の言語地図によって、カレン系言語の歴史研究が長足の進歩を遂げることは間違いないところである。一方、モン・クメール系言語についてはこの地域では珍しいタイプの声調を持つカノー語の資料を公開した。また、ワ系言語の文法研究に関し、語の結びつきに関する論考を発表した。 これまで未知の言語が非常に多かった部分を少しずつ埋めていくことができ、「タイ文化圏言語事典」編纂のための基礎固めは順調に進んでいる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナウィルス感染症の世界的な流行で現地調査ができなかったことはマイナスであるが、予定していた以上の6言語のデータ公開ができたこと、カヤン系言語の言語地図およびカレン州タンダウン地区の言語地図の2枚の言語地図を作成し公開できたことは今後のカレン系言語の研究にきわめて大きな進展をもたらすものであり、こちらは予定をはるかに超える大きな成果である。以上のマイナス面とプラス面を勘案し、おおむね順調と考えてよいのではないかと判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで続けてきた言語データの整理・公開を引き続き進め、「タイ文化圏言語事典」の基礎を作り上げる作業を続ける。また、モン・クメール系言語の文法研究も続けていく。新型コロナウィルス感染症の流行が海外での現地調査を困難にしており、現地調査が可能な状況になるかどうか予断を許さないが、可能な状況になれば現地での補充調査を進める。また、文法調査などはオンラインで調査できないかどうかその可能性を探る。
|