2018 Fiscal Year Annual Research Report
Network Reinforcement toward the Formative Process Elucidation of Endangered Northern Languages
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18H00665
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
呉人 惠 富山大学, 人文学部, 教授 (90223106)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江畑 冬生 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (80709874)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 北方諸言語 / アルタイ諸語 / 古アジア諸語 / 北米諸語 / ネットワーク強化 / 日本北方言語学会 / 類型・系統的比較研究 / 形成プロセスの解明 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,次の2つの課題に取り組むことを目的している。(1) 類型・系統ともに多様な北東アジア諸言語はいかに相互影響し合い形成されてきたのか,(2)「環北太平洋域」として繋がりが指摘される北東アジアと北米の諸言語はいかなる特徴をいかなる歴史的背景により共有しているのか。これらを解明すべく各自が記述研究に従事するとともに,研究者や現地とのネットワーク強化に努めてきた。具体的な実績は以下のとおり。 ①記述研究と成果発表。代表者の呉人は国研国際シンポ(Approaches to Endangered Languages in Japan and North East Asia,2018.8.7)で充当相と抱合に関する発表を行った。9月にロシア連邦でコリャーク語聞き取り調査を行った(成果は『北方言語研究9』で発表)。コリャーク語語り資料をKoryak Text 5として刊行した。下記④の進捗状況を報告した(『道立北方民族博物館研究紀要28』)。分担者の江畑は,語順類型論講座(大連理工大学,2018.5),日本シベリア学会第4回研究大会(三重大学,2018.6),国際シンポ「北方のフォークロアと言語」(北海道大学,2019.2)に出席し研究者との意見交換を行った。形態類型論に関する口頭発表を行った(大阪府立大学,2018.8)。成果は『北方言語研究9』等に発表。 ②日本北方言語学会設立(会長:呉人,事務局長:江畑,会員約40名),第1回研究会開催(2018.12.8-9,東外大AA研),WEBサイト管理運営(https://hoppougengo.web.fc2.com/),学会誌『北方言語研究9』刊行,英語論文掲載と査読体制強化。 ③一次資料のデジタル化。 ④北方民族資料の試行的WEB公開(https://www.facebook.com/HopphmMuseumCollection/)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は当初の計画では,具体的な取り組みとして次の諸点を掲げた。① 記述・類型研究:個別言語の記述研究と諸言語間の類型論的比較研究の推進と統合。② 研究者間ネットワーク:「北方言語学会」設立、WEBサイト開設、研究会開催、既存学術専門誌『北方言語研究』の学会誌化と英語論文の査読体制整備。③ 資料集積:一次資料のデータベース化と電子媒体としての統合と拡充。④ 現地コミュニティとのネットワーク:フォーラム型情報発信ミュージアムの試行。以下,それぞれの進捗状況と「順調」とした理由を述べる。 ①の進捗状況:代表者の呉人はコリャーク語の充当相と与格構文に関し,分担者の江畑はトゥバ語の証拠性に関し記述研究を進め成果を挙げた。呉人は,国研国際シンポでの充当相と抱合に関するアイヌ語との比較に関する口頭発表,江畑は様々な学会・シンポでの研究者との類型論的意見交換により,類型論的比較研究を推進した。 ②の進捗状況:研究者間のネットワーク強化を目指して日本北方言語学会を設立し,初年度ながら約40名の会員を得た。WEBサイトの管理運営,研究会,学会誌『北方言語研究9』の査読体制の強化,刊行等,すべて滞りなく遂行した。 ③の進捗状況:呉人はこれまで収集してきたコリャーク語の語りのテキストをKoryak Text 5 として刊行し,すでに刊行済みの 1-4 と統合してデータベース化するための基盤整備を行った。 ④の進捗状況:道立北方民族博物館との協力により,館所蔵のコリャーク民族資料WEB公開の方策を検討し,フォーラム的情報蓄積の方策の一つとして,試行的に一部の資料を現地や研究者からのコメントが蓄積可能なFBに公開した。 以上,当初の計画に沿って①~④までほぼ予定通り研究を推進できた。とりわけ,学会設立と運営は,代表者,分担者,研究協力者間の周到なチームワークにより予想以上の進展を見ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策は,平成30年度の成果を踏まえ,上に挙げた4つの研究を次の通り発展的に継続していくことである。 ①記述・類型研究:呉人は,コリャーク語チャウチュヴァン方言の記述文法の完成を目指す。また,日本シベリア学会(2019.6.8-9,同志社女子大学),国際ワークショップ(2019.9,民博),日本北方言語学会(2019.11予定,富山大学)等で成果を発表し,論文化する。江畑は,北方チュルク諸語を言語類型論的な観点から実証的に捉え直すことを試みる。このために6月のシベリア学会や10月の朝鮮学会に出席し討議を行う。日本北方言語学会では北方諸言語の膠着性と複統合性に関する研究発表を行い,成果を『北方言語研究』に投稿する.さらに,呉人,江畑は,『北方言語研究』第10号刊行に当たって,北方言語学会の他の会員とも協力しながらアルタイ諸語,古アジア諸語,北米諸語をカバーする共通テーマで類型論的比較研究をおこない,特別企画として寄稿することを検討している。 ②資料集積:呉人は,Koryak Text1-5のデータベース化を図る。 ③研究者間ネットワーク:日本北方言語学会の管理運営を発展的に継続する。これまでは国内からの入会が大半を占めていたが,今後は国外にも学会の存在をアピールし,国外からの入会を促進することで,国際学会としての基盤作りをする。それに伴い,英語論文の投稿が増加することが予想されるため,より周到な査読体制を検討する必要がある。加えて,平成32年度には国際シンポジウムを計画しているため,早急にその立案に取り組む。 ④現地コミュニティとのネットワーク:道立北方民族博物館との協力のもと,コリャーク民族資料の一部をFB上で試行的に公開したが,現地のインターネット環境等により,まだ自由に投稿が寄せられるに至っていないため,より容易にアクセスできるネット環境の整備が不可欠である。
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Remarks |
Kurebito, Megumi (ed.) Koryak Text 5. pp.1-105. Faculty of Humanities, University of Toyama.
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Research Products
(12 results)