2019 Fiscal Year Annual Research Report
Modeling of pragmatic inference in real time by EEG analyses and its relationship with theory of mind.
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18H00669
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
時本 真吾 目白大学, 外国語学部, 教授 (00291849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮岡 弥生 広島経済大学, 経済学部, 教授 (10351975)
木山 幸子 東北大学, 文学研究科, 准教授 (10612509)
米田 英嗣 青山学院大学, 教育人間科学部, 准教授 (50711595)
滝浦 真人 放送大学, 教養学部, 教授 (90248998)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 語用論的推論 / 含意 / 心の理論 / 視点取得 / 事象関連電位 / 発生源推定 / 時間処理 / 文脈の検索 |
Outline of Annual Research Achievements |
言語コミュニケーションにおいて話者の意図はしばしば「含意」として間接的に表現される。話者の意図は発話文の文意と文脈から語用論的推論によって導かれるが,この推論は文脈の検索を伴うし,論理的演繹とは違って確率・もっともらしさの判断を含むので,ヒト知性の中でも最も高次な認知活動と言える。しかし,刻々と変化する脳内の神経活動を観察することが難しかったことに加え,発話理解の実時間処理理論が存在しない背景もあって,語用論的推論の実証的研究は立ち後れてきた。
本研究では,談話における推意理解に伴う脳波を多チャンネル脳波計によって記録する実験を行っている。頭皮上脳波の発生源推移をミリ秒単位で追跡し,心の理論神経ネットワークとの異同の考察を通して,語用論的推論の領域固有性を検討するとともに,脳内ネットワークを分析する最新の脳波解析技術を援用することで,発生源間の相互作用・因果関係を解析し,実時間発話解釈モデルの構築を試みている。
第2年度は、含意理解を伴う談話を聴覚呈示し、脳波を計測する実験を行った。ここでは、(1)話者の意図理解に必要な文脈が先行文脈で明示されているかどうか、(2)理解すべき話者の意図が、現在の意図か、過去の意図かの2要因を操作した。実験の結果、理解すべき話者の意図が過去の意図である場合のみ、文脈の明示的・非明示的対比が神経活動に認められた。このことは、話者の意図理解のための語用論的推論では、話し手の記憶についての検索が行われているとともに、ここでの語用論的推論が命題論理の積み重ねではなく、話し手と知識を共有するための検索であることを示唆していると考える。さらに脳波の発生源推定から、話し手の過去の意図の理解が、楔前部における時制解釈から前部帯状皮質での視点取得へと推移している可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理解が求められている話者の意図が過去に関するものである場合のみに認められたことは、前例の無い知見で、言語コミュニケーション研究一般について示唆があると考えている。本研究成果の一部は、49th annual meeting of Society for Neuroscience (Chicago, USA)で発表し、また、印刷中の代表者の著作において発表予定である。研究の進捗状況は概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は昨年度実施した実験により得られた脳波データについてfunctional/effective connectivityを検証するネットワーク解析を進めている。特にこれまでの解析と考察で注目している楔前部と前部帯状皮質の活動の相関・因果関係が当面の考察課題である。また、視点取得の神経基盤としては心の理論回路のみならず、島皮質の関わりが指摘されているので、言語に関わる神経回路、心の理論回路と島皮質との相関・因果関係に考察を進める予定である。
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Research Products
(5 results)