2019 Fiscal Year Annual Research Report
Geolinguistic Studies of China and Adjacent Multilingual Areas
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18H00670
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
遠藤 光暁 青山学院大学, 経済学部, 教授 (30176804)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 博之 国立民族学博物館, 人類基礎理論研究部, 外来研究員 (10593006)
鈴木 史己 南山大学, 外国語学部, 講師 (20803886)
八木 堅二 国士舘大学, 政経学部, 講師 (60771102)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 華北 / 地理言語学 / チベット語 / 母音体系 / 声調体系 / 子音体系 / 言語地図 / 連体修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
遠藤は地理言語学的アプローチにより、日本を含む中国および周辺地域の言語地図を各種描画し、その形成過程を考察した。語彙としては「馬・南瓜」など、文法としては連体修飾語の語順、音韻としては子音の体系などである。また2019年4月6日に中国北京の中央民族大学にて「中央民族大学2019年中国民族語言地理語言学沙龍」を開催し、日本側5名、中国側10名で発表・討論を行った。またオーストラリアで研究発表を行い、中国各地の7つの大学の方言学者と地理言語学に関する研究交流を行った。 鈴木博之は今年度は本科研費を用いて中国への出張を3度行った。出張では、計2つの研究集会に参加して関連する研究発表を行い、招待講演を1件行った。加えて、雲南省において1か月のフィールドワークを行い、言語資料を収集した。本研究の成果として、論文を2件発表し、国際学会で数件の発表を行った。 八木は幅広く文献の調査を行い、文献目録を作成するとともに、子音や音節融合に関して山西省・河南省・内蒙古自治区など中国華北地域を中心にデータの収集と入力を行った。母音体系や声調体系、アクセントに関連する項目で、すでに一定程度の入力を終えたものについては、分析にとりかかり、学会発表を行うとともに論文としてまとめた。 鈴木史己は江西省・湖南省の言語データベースを整理するとともに、湖南省とその近隣地域を範囲とした高精細度の語彙地図のサンプルを作成・分析した。それと同時に、本科研の初年度に整理した浙江・江蘇・安徽3省のデータベースについても引き続き整理・補充し、特に他の2省に比べて地点数が不足していた安徽省のデータを重点的に追加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遠藤は中央民族大学や広西大学など中国少数民族語の研究に強力な基盤と実績をもつ諸大学との交流を深めており、そうした現地の研究者たちとも協力してより肌理が細かくより広範でより深い解釈を進める態勢を構築してきた。中国諸言語における子音体系の地理言語学的研究も口頭発表済みで、それを論文化し、更に今年度から始まるアジア・アフリカ地理言語学研究プロジェクトにおいて広範囲の地理分布に基づき検討を行うためのパイロットケースを提供した。 鈴木博之は調査計画に基づき、言語資料収集のための現地調査を行い、予定に沿ったデータ収集を達成することができた。 八木は5月に国際中国語学会でのワークショップにおいて母音項目に関する発表を行い、結果を論文としてまとめ、Studies in Asian Geolinguistics, Monograph Series上で発表した。また、山西省における軽声と語末変調に関する論文を執筆し、『中国語語学』上で発表した。データの入力と分析については、関連する項目とあわせて随時補充作業を行っている。 鈴木史己は初年度に扱った浙江・江蘇・安徽3省に引き続いて、本年度は江西省・湖南省の言語データベースの整理に取り掛かり、現時点で手に入った資料についてはほぼデータ入力を終えている。高精細度地図のサンプルについても、初年度に作成した浙江省・江蘇省に加えて、今年度は湖南省の語彙地図の作成・分析を試みた。安徽省・江西省についてはやや地点密度のむらが見られ、地図サンプル作成には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
遠藤はタイカダイ語の数詞一~十、百、千などについて中国・東南アジア部を包括する全分布地域に対して方言地図を作成し、その形成過程を考察する。特にケラオ語を含むケヤン語派がタイカダイ語の中でも古い特徴を保つことが知られており、オーストロネシア語との関連も見られ、可能ならば現地調査も行い、一層徹底的な扱いを目指す。漢語方言および周辺諸言語についても適切なテーマで地理言語学的な扱いを継続する。また今年度は『アジア言語地図集』の編纂と「アジア・アフリカ地理言語学研究」プロジェクトが進行し、より大きな視野から当該地域を扱うことを可能にする。 鈴木博之は言語地図作成地域を広げるための追加調査を、適切な現地研究者を派遣し、資料収集を行う。その資料も加え、3年間の研究の到達点として、モノグラフを準備する。 八木は引き続き文献の調査を行うとともに、データの入力と補充を行う。母音体系と声調体系については、対象地域を拡大し、さらに子音体系についてデータの分析を行うとともに、音節融合の調査を行う。分析の進んでいる項目については、学会発表をし、論文としてまとめる予定である。文献目録についても、現在扱っている項目以外のデータも調査し、より網羅的なものを目指す。 鈴木史己は本年度までの研究計画がおおむね達成できているため、当初の予定通り、次年度は福建省・台湾について、地点データを補充して基礎語彙の高精細度地図を作成する。本科研の最終年度にあたるため、初年度に扱った浙江・江蘇・安徽3省、本年度に扱った江西省・湖南省についても、新たな調査報告の収集・再整理につとめ、地点密度をさらに高めるとともに、未作成の安徽省・江西省の高精細度地図にとりくむ。
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Research Products
(10 results)