2019 Fiscal Year Annual Research Report
Democracy by Violence in the Twentieth Century: A Transnational History
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18H00697
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長縄 宣博 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 教授 (30451389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐原 哲也 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (70254125)
山根 聡 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (80283836)
草野 大希 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (90455999)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 20世紀 / 暴力 / 民主主義 / 帝国 / イスラーム / ナショナリズム / 社会主義 / ユーラシア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、第一次世界大戦前夜から戦間期への移行を共通の重点課題とした。7月の定例の研究会では、佐原が大戦に向かう時期のバルカン半島を中心とするテロ組織間の協働と相剋について、草野が米国の「介入主義」の系譜について報告した。2月の定例会では、本研究の分担者でカバーしきれない領域を外部講師で補う試みを始めた。今回は1980年代の紛争(光州事件、北部ウガンダ紛争、レバノン戦争)に着目した。本研究は、国際的なネットワークも構築しつつあり、12月にモスクワの高等経済学院のロシア史研究グループとシンポジウム「帝政ロシアの地方再訪:文学的想像力と地政学」を行った。 資料調査と成果発表は、各研究分担者の役割に応じて展開した。長縄はサンクトペテルブルグ・ヨーロッパ大学の革命・内戦研究グループ主催のワークショップで、内戦期中央アジアにおける赤軍タタール人部隊に関する論考を提出し、北米のスラヴ・ユーラシア学会で、中央アジアの内戦を経験したタタール人外交官がイランとサウジアラビアで展開した初期ソ連外交について報告した。佐原は、1990年代以来のロシアと旧ユーゴスラヴィアにおけるサラフィ・ジハード主義の拡散を比較研究するため、モスクワとベオグラードで口頭報告し専門家と意見交換をした。山根は、南アジアのイスラーム復興思想家マウドゥーディーの著作の翻訳と伝播に関する研究発表を行った。その調査の過程で、1979年のイラン革命の際、ホメイニーとマウドゥーディーの間で革命に関する話し合いがあったらしいことを突き止めた。草野は、米国が理想とする「民主主義」の育成のためには、事実上の「帝国主義的」な軍事介入を厭わなかったウィルソン的リベラル介入主義の特徴と功罪を、冷戦終結以降の人道的介入や保護する責任の「失敗」が認識される現代的文脈において再考する論文を学会誌『国際政治』に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、1)帝国秩序への抵抗(1870年代から1920年代初頭)、2)反帝国主義の時代の国民形成(戦間期から冷戦期へ)、3)拡散する戦闘的イスラーム主義者(1979年以降)という三つの軸を設定している。長縄は1)の軸について、初期ソ連の中東外交が旧ロシア帝国のムスリム地域(とりわけ中央アジア)の内戦で育まれた活動家や言説に下支えされていた側面について研究を進めている。また、本研究全体の理論的な貢献を強化すべく、ロシア/ソ連と周辺世界との相互作用の観点からロシア革命を20世紀史に位置付ける、多国籍の執筆者を結集した英文論集の編集にも本格的に着手しはじめた。草野は2)の軸について、「非公式の帝国」としてのアメリカをめぐる「四つの波」(①建国初期(北米帝国)、②海洋帝国(西半球帝国)、③冷戦期(西側帝国)、④冷戦後(世界帝国))の時期区分を設定し、「アメリカの『介入主義』の系譜」に関連する研究を、文献資料の収集と分析ならびに査読付き論文刊行によって着実に進めている。山根は3)の軸について、ホメイニーとマウドゥーディーが直接対話した可能性に気付き、当時の刊行物など史料を探す作業を鋭意進めている。それは、イスラーム革命運動の伝播をより実証的に跡付けることを可能にする。佐原は2)と3)の軸を架橋する形で、第二次世界大戦後の内戦とパラミリタリーの比較研究に関する論文を執筆中であり、20世紀のバルカン諸国の極右政党の思想交流についての文献・資料調査を進めようとしている。確かに、共同研究の二年目ではまだ分担者各自がそれぞれの課題を深めるのに忙しく、統合的な20世紀史像の構築にまでは至っていない。とはいえ、大国の論理や大義が意図せざる帰結を招く現場に居合わせた個々人を主要アクターとして捉えることが有効な方法になるのではないかという認識は共有するようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、各年度の重点課題の下で、それと関連付ける形で各自が担当する研究を遂行し、年二回の定例の研究会や各自の学会で成果を発表することにしている。2020年度は、戦間期に重点を置きながら冷戦期を展望することを共通の課題とする。そして、各自が国内外で資料収集・分析を行うと同時に、定例の研究会(7月と2月に予定)では、教科書の章となる原稿の議論を続け、20世紀の統合的な見方を鍛えていく。次年度は海外出張の予定が立てにくいため、関係図書の構築や現地の研究者に謝金を支払う形の資料調査を精力的に進めたい。定例の研究会では昨年度に引き続き、本研究でカバーできない地域(アフリカや東南アジア)について、国内の専門家を招聘する。さらに、和文の教科書と並行して研究代表者は、20世紀史にロシア革命を位置付ける英文論集の編集作業を進める。学会報告では、8月にモントリオールで予定されていた国際中東欧研究学会(ICCEES)世界大会が一年後に延期されたが、秋には各人が南アジア学会、国際政治学会、ロシア史研究会、北米のスラヴ・ユーラシア学会(ASEEES)などの年次集会で研究報告を行いたい。 2021年度は冷戦期に焦点を合わせ、東西の体制を越えた比較と連関の網を設定し、冷戦期の暴力からいかなる秩序が生成されたのかを具体的な地域の文脈で考察する。2022年度は、1979年から現在に至るイスラーム聖戦士の流動を捉え、ジハードがイスラームに内在的な問題ではなく、地球規模でのイデオロギーと暴力の複雑な連関の一角であることを明確にすることを共通の課題とする。最終年度には札幌で総括の国際シンポジウムを行う。
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Research Products
(14 results)
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[Book] Imperskaia politika akkul’turatsii i problema kolonializma (na primere kochevykh i polukochevykh narodov Rossiiskoi imperii)2019
Author(s)
Liubichankovskii S.V., Dzhundzhuzov S.V., Koval’skaia S.I., Abashin S.N., Abylkhozhin Zh.B., Vasil’ev D.V., Vasil’ev I.Iu., Gafarov A.A., Godovova E.V., Dmitriev V.V., Zagidullin I.K., Ikeda Y., Matsuzato K., Morrison A., Naganawa N., Nasonov A.A., Smolarts E., Tsirulev R. et al.
Total Pages
480
Publisher
Orenburg: Izdatel’skii tsentr OGAU
ISBN
9785604305812
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