2019 Fiscal Year Annual Research Report
感情労働の地域・階級間比較にみる「近代家族」、フェミニズム思想の越境性とその限界
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18H00702
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
中沢 葉子 (並河葉子) 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (10295743)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 伸子 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (00192675)
鳥山 純子 立命館大学, 国際関係学部, 准教授 (10773864)
吉村 真美 (森本真美) 神戸女子大学, 文学部, 教授 (80263177)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フェミニズム / 近代 / 周縁 / 家族 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、周縁化された地域、社会層にとっての近代フェミニズムの受容と相克について、分担者および協力者とともに研究した。 2019年11月にはロンドン大学でアフリカ人ディアスポラを研究しているシーハン・デ・シルヴァ・ジャヤスリヤ氏を迎え、関西大学、大阪大学、京都大学などでセミナーを複数回開催し、インド洋地域におけるアフリカ人ディアスポラ研究の最新の成果やインド洋地域に広がるアフリカ系コミュニティの中での女性や子どもたちの位置づけについての報告を受けた。 また、ここまでの研究成果の報告として2020年度の日本西洋史学会大会で小シンポジウムの開催を申請し、「周縁からのフェミニズムの再検討-19世紀から20世紀にかけてのイギリスとイギリス帝国におけるフェミニズムの射程とその限界-」と題するシンポジウム開催が決定した。 12月1日には東洋大学人間科学総合研究所公開セミナー「社会史再考 6」にて、研究代表者の並河が「帝国史と社会史」とのタイトルで、本研究プロジェクトの成果として、19世紀初頭西インドの奴隷の家族についての研究動向やその意義について報告した。 2020年1月26日にはキャンパスプラザ京都にて、本科研メンバーを中心とした研究会を開催した。研究分担者である鳥山純子が「個人史に読み解くエジプトの移り変わり:カイロの私立学校好調の語りに見る植民地主義、国家、開発」という報告し、質疑応答が行われた。本研究会では、出席者のうち報告者の鳥山氏が人類学、その他メンバーが歴史学と異なるディシプリンを専門としていたため、分野横断的なディスカッションが行われ、歴史学と人類学で相互に知見や研究手法を共有することで得られる積極的な効果について確認できる貴重な機会となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は昨年度に引き続き各分担者が担当領域の研究を個別に進めると同時に、研究会やセミナーで研究成果についての情報を共有した。 研究チームはそれぞれ国内外における史料収集なども積極的に行った。分担研究者で20世紀のアイルランドおよびイギリスのフェミニズムについて研究を進めている奥田はBritish Library、Women's Library(LSE)、Archive of Irish in Britain (AIB) at London Metropolitan Universityで資料調査を行い、研究が大きく進展した。 代表研究者である並河は12月にイギリスのブルネル大学付属の内外学校協会史料館およびケンブリッジ大学図書館内にある内外聖書協会史料館において19世紀初頭西インドにおけるミッションの書簡類の調査を行い、両協会が緊密な協力関係にあることをうかがわせる宣教師の書簡や女子教育に関連する史料の存在を確認した。 また、研究概要でも述べた通り、メンバーそれぞれが研究会で報告を行ったり論考を発表することで研究成果を確認した。とくに、研究セミナーでは海外からの研究者も招へいし、関連分野の先端的な研究成果を共有することができた。例えば、ロンドン大学コモンウェルス研究所のシーハン・デ・ジャヤスリヤ氏を招いたセミナーではインド洋におけるアフリカ人ディアスポラの結果インド西岸やモーリシャスなどに点在するアフリカ系の人びとのコミュニティにおける文化の継承や女性の役割などについて議論した。 また、1月に開催した科研メンバーによる研究会では分担研究者である鳥山が人類学の立場からの報告を行い、歴史を専門とするメンバーの研究者たちと議論することで、ジェンダー研究において互いのディシプリンを相互に参照しながら研究することで広がる視野を確認でき、今後の研究の発展可能性を確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は中間的な成果報告の場として日本西洋史学会大会において小シンポジウムの開催を予定している。2019年度中に応募したシンポジウム課題については主催者より採択の通知を受領しており、現在、内容について登壇者と打ち合わせている段階である。 また、最終年度にはカリフォルニア大学バークレー校のCaitlin Rosenthal氏を招へいして、セミナーを開催予定である。Rosenthal氏とは、2019年夏に代表者が資料調査をカリフォルニア大学で行った際に来日日程やセミナーの内容についての打ち合わせを行っており、準備を開始している。 今年度は西洋史学会大会(当初5月開催予定が12月に延期)のシンポジウムに向けて、研究をさらに進めメンバーが担当する地域、時代についての個別事例の研究をさらに精緻なものにしていくことに努める。 また、スコットランドにおける初期のフェミニズムに関係すると思われる資料収集についても検討している。今般の新型コロナウィルスの影響で資料調査の時期については未定ながら、エディンバラおよびグラスゴーの図書館で関連資料を調査することを予定している。 18紀末から20世紀にかけて、フェミニズム運動の周縁に位置していた女性たちが主流のフェミニズムと接する場であったチャリティや反奴隷制運動および奴隷制擁護運動、教育現場で主流派のフェミニズムとの接触によりどのようなリアクションを示したのかについて新しい資料を用いて分析を進める。人類学と歴史学だけではなく、Rosenthal氏のような経済史の分野との対話も進めながらフェミニズムと感情労働の関係が歴史的にどのように生成し、変化してきたのかについて検証する。
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Research Products
(10 results)