2020 Fiscal Year Annual Research Report
日本古代国家における中国文明の受容とその展開―律令制を中心に―
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18H00708
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大津 透 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (70194199)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本史 / 古代史 / 律令法 / 中国文明 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本古代の国家形成には、中国の律令法を継受して律令を作ったことが大きな枠組みをなして画期となった。北宋天聖令の発見を受けて日唐律令比較研究は新たな段階を迎え、詳細な分析によって中国法継受の特色と意義が明らかになっている。本研究ではこれまで続けてきた律令条文の日唐宋比較研究を一層進めるとともに、『令集解』諸説に引かれる中国漢籍の分析や書籍の輸入状況の解明によって、奈良平安時代の知識人の中国学問受容の実態を明らかにしたい。律令法継受以前の帰化人から、平安時代前期の明法家にまで対象を拡げ、律令だけでなく漢籍などの中国文明の受容のあり方を分析して、その中で律令制の受容の段階と意味を明らかにすることを目的とする。 研究代表者と連携研究者・研究協力者計11名で、律令班と文明班に分かれて検討を進めるが、2020年度4月以降、新型コロナ感染症による厳しい移動制限や施設の利用制限が始まり、まったく対面での研究会が行えない状況になった。中国への史跡調査旅行や社会科学院古代史研究所との打ち合わせは、中国では厳しいコロナ規制がされ、計画もたてられなくなり、科研費は翌年へ繰越し、さらに翌々年への事故繰越もおこなった。 2020年度は、ようやく2021年3月になり初回の研究会が行えるようになり、2021年度は東京および京都で4回の研究会を行ったが、各大学の独自の規制もあり、全員が集まることには困難があった。2022年3月には九州大学で研究会を行い、九州歴史資料館での特別展および大宰府史跡の現地調査も行った。また学会での報告もオンラインで行われた。 連携研究者:坂上康俊・榎本淳一・丸山裕美子・辻正博・三谷芳幸・吉永匡史・武井紀子、研究協力者:西本哲也・神戸航介・古田一史
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナの規制の下だったが、研究代表者を編者として、科研メンバーが全員参加する形で論文集『日本古代律令制と中国文明』を刊行した。これは本研究会での研究活動の最大の成果であり、編目毎の律令法の比較だけでなく、日唐の格や古文書の検討も行い、移民や学術などアジア文明の受容のあり方や飛鳥浄御原令の性格を考えるなど、学界に対して広い視野から貢献をしている。また研究会メンバーは、学術雑誌のほかにも、研究代表者が『令集解』の研究史をまとめるなど、小口雅史氏や古瀬奈津子氏の還暦や退職の記念論集にも多くの律令制に関する論文を投稿し、刊行された。コロナの厳しい状況下のわりには、活発な研究発信を行ったと言える。また研究代表者は2021年東方学会秋季学術大会で講演「藤原道長の史的意義」を行った。オンライン開催となったのは残念だったが、ズームが無料で公開されたこともあり、例年の対面よりも非会員もふくめ多くの聴講者を得たことは怪我の功名だった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年秋の史学会大会では、公開シンポジウム「君主号と歴史世界」を対面で実施し、研究代表者は理事長でもあり、みずから天皇号について報告したい。また山川出版社から『藤原道長』の出版もめざしている。国内での研究会を進めるが、コロナが収束しないため、中国での史跡調査や打ち合わせを行いたいが、おそらく実現は困難な感じがする。また『新唐令拾遺』の出版への準備も進めたいが、コロナによる影響が大きく、遅れざるをえない可能性が高い。
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