2020 Fiscal Year Annual Research Report
生物分布境界域「下北半島」における更新世人類集団の行動様式に関する学際的研究
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18H00742
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
渡辺 丈彦 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (90343003)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 孝雄 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (20269640)
奈良 貴史 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 教授 (30271894)
澤田 純明 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 准教授 (10374943)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 後期更新世 / 生物分布境界域 / 下北半島 / 石灰岩地帯 / 洞窟 / 岩陰遺跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
後期更新世最寒冷期、北海道の旧石器文化が氷橋化した津軽海峡を通して他の動物群とともに本州島に流入した結果、同時期以降の本州島において、北海道の影響を受けた旧石器文化が列島各地にみられるようになる。しかし北海道と本州島の両旧石器文化の接点となる津軽海峡南岸域では、人類遺跡の調査例数が少なくその実態は明らかではない。そこで本研究では、津軽海峡南岸域、具体的には下北半島北端を研究対象に、異なる生業活動の場と推定される開地遺跡と洞穴遺跡をそれぞれ発掘調査し、出土遺物の比較研究をおこなうことで、同時期の北海道から本州島への人類流入の在り方を復元することを目的とする。2018年度(研究1年目)、2019年度(研究2年目)は尻労安部洞窟の補足的発掘調査と下北半島周囲における旧石器時代遺跡の分布調査を実施し、尻労安部洞窟の形成時期・形成要因に関する貴重な所見も入手した。また分布調査の成果としては新たに5ヶ所の洞穴・岩陰を発見、測量調査と一部の試掘調査も実施した。 研究3年目の2020年度は、尻労安部洞窟の補足的発掘調査と新規発見の洞窟などの試掘調査を実施する予定であった。しかし新型コロナウイルスの影響により現地野外調査は中止となった。そのため、研究は過年度調査で入手した動物骨の放射性炭素年代測定にとどめ、研究費の多くを繰越した。研究4年目の2021年度も前年同様の理由により現地野外調査は中止となった。そのため研究計画を変更し、遺跡出土動物骨の三次元形態把握研究と、石器資料の理化学的産地推定研究に留め、前年度同様、研究費の一部を繰越した。翌2022年度も、新型コロナウイルスの影響が一部残ったが野外調査は実施し、尻労安部洞窟の補足調査は完了した。また洞窟・岩陰遺跡の分布・試掘調査も実施し、試掘調査では旧石器時代の文化層は確認されなかったものの、新たに有望な岩陰遺跡を1か所確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本採択課題は、2020年度実施予定であったが、下記理由により、研究費の大部分を2021年度に繰り越し、更にその一部を2022年度に繰り越している。二年度にわたる繰り越しとなった結果、研究内容に一部変更となり、進捗状況を「やや遅れている」とした理由は下記の通りである。 2020年度の研究の中心は、青森県下北半島での洞窟を含む先史時代遺跡の分布調査と発掘調査であったが、2020年3月に新型コロナウイルス感染症が大規模に拡大、政府による「県を跨いだ移動の禁止」を含む緊急事態宣言、研究代表者・研究分担者の所属機関内における「宿泊を伴う調査研究活動の禁止」の指示、さらに野外調査実施予定自治体(青森県むつ市・東通村他)からの「来訪自粛」の要請がなされ、それを中止せざるを得なかった。また研究費の大部分を繰り越した2021年度においても新型コロナウイルスの感染拡大は終息せず、前年度同様の理由により、野外調査は中止せざるを得なかった。その結果、当該年度の研究は、過年度に入手していた遺跡出土資料に対する理化学的分析等を中心としたものにシフトせざるをえず、大幅な研究計画変更となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」で示した通り、本採択課題は、2020年3月に大規模に拡大した新型コロナウイルス感染症の影響により計画が大幅に遅延して、その研究内容も一部変更を余儀なくされた。不測の事態であり、対応は困難であるが、十分な感染症対策を行うことによって、野外調査を実施することが可能と考える。具体的には、野外調査参加者の2度以上のワクチン接種、調査直前のPCR検査の実施、宿泊部屋・食事の個別化など、十分な感染症対策を行い、調査実施地自治体からの了承を取り付け、野外調査を実施する。
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Research Products
(4 results)