2018 Fiscal Year Annual Research Report
古代メソポタミア北部における歴史時代の物質文化の研究ー日本隊の発掘資料を中心にー
Project/Area Number |
18H00743
|
Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
沼本 宏俊 国士舘大学, 体育学部, 教授 (40198560)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 重郎 筑波大学, 人文社会系, 教授 (30323223)
柴田 大輔 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (40553293)
西山 伸一 中部大学, 人文学部, 准教授 (50392551)
眞保 昌弘 国士舘大学, 文学部, 准教授 (60407202)
小高 敬寛 東京大学, 総合研究博物館, 特任助教 (70350379)
下釜 和也 (財)古代オリエント博物館, 研究部, 研究員 (70580116)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | メソポタミア / テル・タバン / アッシリア / 楔形文字 / 古バビロニア / イラク / シリア / ミタンニ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、メソポタミア北部(イラク北部とシリア北東部)の前2~1千年紀(古バビロニア~新アッシリア時代)の遺跡において我が国の調査隊(東京大学、古代オリエント博物館、国士舘大学)が実施した発掘調査によって出土した豊富な考古資料を包括的に研究する。以下の5分野の研究班により研究を実施しており、本年度の大きな研究成果を下記する。 ①シリア、テル・タバン考古資料研究:国士舘大学で管理している97,98年度の調査で出土した古バビロニア時代とミタンニ時代(前18~15世紀)の約400点の様々な土器の実測、観察、写真撮影、トレースを実施した。特に古バビロニアの土器の正確な年代は解っており、本資料がこの時代の土器研究の標準になるのは確実である。出版用の図版作成までの作業を行った。2019年度には出版予定である。 ②シリア、テル・ルメイラ考古資料研究:古代オリエント博物館に保管されている中期青銅器時代(前19~16世紀)の土器の分析、及び観察、写真撮影、製図作業を含む一連の作業を実施した。 ③イラク、テル・サラサート考古資料研究:東大総合研究博物館に保管されているテル・サラサート1号丘出土の古バビロニア時代の土器の分析及び観察、写真撮影、製図作業を行った。約100点の資料のトレースは完了した。 ④イラク、ヤシン・テペ考古資料研究:本年度は本格的な発掘調査は実施せず、過去2回の調査で発見した同地域初の新アッシリアの大規模な公共的建物跡や未盗掘地下式煉瓦造墓等から出土した大量の土器や様々な注目すべき遺物の整理分析、保存修復を行った。その結果、青銅製のペンダントに楔形文字の銘文が刻まれていたことが明らかになった。銘文内容から同建物跡の年代と機能の特定が期待される。 ⑤テル・タバン楔形文字資料研究:テル・タバンから出土した古バビロニアの粘土板文書と中期アッシリアの楔形文字資料の詳細な解読分析を実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内の三研究機関に保管されている資料の研究調査は上述のように支障なく遂行できている。特に国士舘大学沼本研究室で保管しているシリア、テル・タバン遺跡出土の古バビロニア時代とミタンニ時代の土器の大半の整理・分析が完了した点は今年度の大きな進展といえる。今年度以降は中期・新アッシリア時代の出土資料を重点的に整理・分析したい。 イラク、クルド人自治区のヤシン・テペ遺跡の発掘調査は、年度初めは現地が政情不安で渡航が危惧されたが、情勢が回復したため予定どおり現地調査を実施することができた。今回の調査は、主にこれまでに出土した遺物の整理分析・保存修復を行った。その結果、同地域初の上述の文字資料を発見した点は特筆したい。今年度の調査は多大な成果をあげることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は上述の5分野の研究班により研究を遂行している。 三研究機関に保管されている土器資料の整理分析の進捗具合は、現状では足並みが揃っているとは言えない。東大とオリエント博物館の資料分析がやや遅れており、今年度以降は重点的に研究を推進させたい。特にシリア、テル・タバンと同地域に所在するイラク、テル・サラサートの資料は、メソポタミア北部の土器編年を確立するうえで極めて重要で、今後は古バビロニア時代からミタンニ時代の土器群の更に精細な整理分析を実施したい。 今年度のヤシン・テぺ調査では新アッシリア時代の楔形文字の銘文が刻まれた青銅製ペンダントが発見されたことから、今後の調査で更なる文字資料の発見が期待される。今後の調査も同時代の公共的建物跡と地下式墓の発掘に焦点を置き粘土板文書、碑文等の発見を目指したい。 今後は早急に各研究班の研究成果を相互に比較検討・総括し、北メソポタミアの未解明の土器編年と文化編年の確立を急ぎたい。
|
Research Products
(9 results)