2019 Fiscal Year Annual Research Report
高精度14C年代測定にもとづく先史時代の人類活動と古環境の総合的研究
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18H00757
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Research Institution | Gakushuin Women's College |
Principal Investigator |
工藤 雄一郎 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 准教授 (30456636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
百原 新 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (00250150)
小林 謙一 中央大学, 文学部, 教授 (80303296)
坂本 稔 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (60270401)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 放射性炭素年代測定 / 古環境 / 旧石器時代 / 縄文時代 / データベース |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,旧石器時代から縄文時代における考古遺跡と古環境の双方が調査された既発掘遺跡出土資料を中心に新たに高精度な14C年代測定を行い,遺跡と当時の古環境情報とを対応させ,人類活動の変遷とその背景となる古環境との関係を解明すること,これとともに,既存の年代測定例を集成・データベース化して活用できるようにし,先史時代の人類活動の変遷を正確な「時間軸」に基づいて記述できるようにすることを目的としている。 本年度は以下の3項目について研究を進めた。 ①旧石器時代から縄文時代の既発掘遺跡での新規の14C年代測定:AMS法が普及する以前に発掘された遺跡出土資料を調査し,保存されている炭化物を採取し,新規の14C年代測定を実施した。対象としたのは,長崎県伊木力遺跡(縄文時代前期),東京都百人町三丁目西遺跡(縄文時代草創期)などである。また,縄文時代中期の漆器が大量に出土した福島県前田遺跡(縄文時代中期~後期)についても年代測定を実施した。 ②旧石器時代から縄文時代の既分析済みの古環境資料の新規の14C年代測定:本年度は,後期旧石器時代前半期の遺跡である福島県笹山原遺跡群に隣接する赤井低地において,ボーリングコアの採取を行った。この過去5万年間のコアが得られATと思われる火山灰も検出した。特に笹山原遺跡の活動時期である3万4千年前前後の古環境を明らかにする上で極めて重要な試料が得られた。 ③遺跡発掘調査報告書14C年代測定データベースの構築と公開:国立歴史民俗博物館が所蔵する約6万冊にも及ぶ日本国内の行政の緊急発掘調査の報告書に記載された14C年代測定例を悉皆的に調査し,これをデータベース化する作業については,九州地方のデータの整備・公開の準備を進めた。計4164件を追加し,九州全県については公開を完了した。これにより,現在までに32724件のデータを公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は上記の遺跡,古環境試料について,合計50点を超える試料の年代測定を実施した。また,赤井谷地でのボーリング調査では極めて良好なコアが得られたことから,年代測定だけでなく,花粉分析,テフラ分析も含めて総合的な分析を進めているところである。 放射性炭素年代測定データベースについては,本年度は4000点を超えるデータを追加しており,当初の計画通りに順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度も,年代測定が可能な試料の測定を進めていく予定であるが,コロナウィルス問題で試料採取のための出張が出来ない場合,年代測定データベースの整備の作業を中心に進めていく。現在,北海道および西日本のデータ入力を進めており,本年度中に日本全国のデータ入力のおおよその完成を目指していきたい。
なお,昨年度採取した赤井谷地のボーリングコアについては,すでに分析機関に分析を委託しており,今年度の予算内で花粉分析および年代測定の試料数を追加していき,笹山原遺跡における後期旧石器時代前半期から縄文時代全体を通じた古環境の変遷のデータを収集する計画である。
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