2019 Fiscal Year Annual Research Report
Risk evaluation method for natural disaster considering geomorphic development
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18H00764
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
小野 映介 駒澤大学, 文学部, 教授 (90432228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 香子 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 准教授 (00378548)
佐藤 善輝 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (60751071)
小岩 直人 弘前大学, 教育学部, 教授 (70296002)
森田 匡俊 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 准教授 (90566720)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自然災害 / 地形 / ハザードマップ / 災害史 / 減災 / 遺跡 / 地質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はおもに3つの地域(青森平野・京都盆地・那覇低地)を対象として、各地域の地形発達を明らかにしたうえで、その特徴を考慮したハザードマップを作成しようとするものである。 昨年度の研究実績としては、京都盆地を対象とした地形発達史研究が挙げられる。この研究では、京都盆地東縁、白川扇状地(岡崎地区)の4つの遺跡を対象として地形・地質調査を実施し、すべての調査地点で有機質の細粒 堆積物とそれを覆う姶良Tn火山灰とみられる火山灰の堆積を確認した。また、当地では姶良Tn火山灰の降灰直後と2,000 cal BP前後の少なくとも2時期に土石流が発生し、扇状地を発達させたことが明らかになった。当地には平安時代前期以降に貴族の別荘や寺社が造られ始め、その後、六勝寺が建立されるようになるが、平安京域における都市的土地利用が一部の地域に限られていく一方で、岡崎地区の土地利用が活発化した背景として、基盤となる土石流堆積物による地形や水文条件が関与している可能性を指摘した。 さらに、当初設定した3地域以外にも地形発達とハザードマップ作製の関連性を追求するために、幾つかの地域で調査を行って成果を公表した。沖積層の堆積過程や沖積平野の発達過程については、三重県宮川平野および石川県小松平野を対象として明らかにした。さらに、過去に発生した津波の規模に注目したものとしては、タイ南西部パカラン岬周辺、静岡県太田川低地、千葉県九十九里浜平野を対象とした研究がある。 以上の地形・地質研究に加え、ハザードマップ作製および防災・減災教育に関連して、複数の地域を対象として実証研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究でメインとする3つの地域における調査・研究の進捗状況は以下のとおりである。 青森平野においては、5地点における機械ボーリング調査を実施し、得られたコア試料の層相・層序の記載および年代測定を実施した。その結果「バリアー・ラグーンシステム」、すなわち海側に浜堤が形成され、その内陸側の潟を河川堆積物が埋めるかたちで平野が形成される様子について、その概要が明らかになった。 京都盆地東縁の白川扇状地については、地形・地質調査に基づく地形発達史の解明がなされたので、それをもとに花崗岩山地を後背地に有する土砂災害を考慮したハザードマップの作成に向けての検討を始めた。 那覇低地については、地域の地形・地質を把握するためのフィールドワークを繰り返し行い、沖積平野部の堆積環境変遷を把握するための地質調査候補地を選定した。機械ボーリングによる地質調査は、那覇小学校において実施する予定であり、用地交渉を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
各対象地域の地形・地質調査は順調に進みつつあるので、研究の力点を地形発達史を考慮したハザードパップの作成へと移行していきたい。ハザードマップは、地形発達史と今後起こりうる自然災害に関してGISを用いて統合的に把握し、提示する予定である。各対象地域における研究の進め方は、以下のとおりである。 青森平野で実施したボーリング調査によって得られた5本のコア試料について、これまでの分析に加えて、珪藻分析および粒度分析を実施するなど、より詳細な堆積環境変遷を明らかにする。それをもとに地形発達史を構築し、さらにハザードマップの作成に繋げたい。 京都盆地東縁の白川扇状地については、これまでに得た土石流の発生履歴情報を生かしてハザードマップを作成する。また、土砂生産のあり方を解明するためにも、白川上流域における大規模崩壊地形の調査を追加で実施したい。 那覇低地については、用地交渉を終えた那覇小学校において機械ボーリング調査を2020年8月に実施するとともに、周辺地域の既存地質資料を整理し、これまで不明であった那覇低地の形成過程の一端を解明する予定である。 以上の3地域について調査研究を進めるとともに、他地域における調査事例なども加え、地形環境の異なる場所における自然災害の一般性や差異に注目し、減災の在り方についての議論を行う土台作りをしたい。
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Research Products
(12 results)