2019 Fiscal Year Annual Research Report
東ポリネシアにおける人類到達時期とその後の植生改変
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18H00768
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
藤木 利之 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (10377997)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥野 充 福岡大学, 理学部, 教授 (50309887)
河合 渓 鹿児島大学, 総合科学域総合研究学系, 教授 (60332897)
森脇 広 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 名誉教授 (70200459)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 東ポリネシア / 花粉分析 / 放射性炭素年代 / 古植生変遷 / 人類到達 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年8月にクック諸島のラロトンガ島、アチウ島、マンガイア島、マウケ島の4島で現地調査を行ない、人類到達年代を花粉分析による植生変化から突き止めるため、湿原堆積物の採取や地形調査等を実施した。各島で5.5 mの堆積物を2本、合計8本のコアを採取した。ラロトンガ島とマウケ島の堆積物は、植物片を多く含む湿原堆積物であったが、アチウ島とマンガイア島は、湖湖畔の湿地で採取したため、シルトなどが多い堆積物であった。それらのコアから得られた植物片の放射性炭素年代測定を実施した結果、ラロトンガ島のコアは約4000 cal BP、アチウ島は約3500 cal BP、マンガイア島は約1500 cal BP、マウケ島は約6000 cal BPの古環境記録を含む堆積物であることが分かった。 昨年度採取したラロトンガ島カレカレ湿原の12 m堆積物については、堆積物に含まれていた貝の同定を依頼し、さらに有孔虫と珪藻の分析を依頼した。約4000 cal BPに相当する6 m(約4000 cal BP)以浅は淡水性の珪藻のみが検出され現在の湿原同様の湿地環境であったと考えられたが、6 m以深では汽水性の珪藻や浮遊性の有孔虫と沿岸域に生息する底生有孔虫が検出され、9.9 mに含まれていた貝はサンゴ礁の礁池内や湾内の潮間帯下部から潮下帯の砂底に生息するヒメクワノミカニモリであることが判明した。当時の海岸地形を知るうえで、非常に重要な結果が得られた。 アチウ島の堆積物から古植生復元を行った結果、約1700 cal BPでタコノキ属花粉やヘゴ科胞子の急減が確認できた。これが人為的な影響であると考えると、考古学的データの人類到達年代と調和的結果と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでクック諸島のラロトンガ島、アチウ島、マンガイア島、マウケ島の4島で現地調査を行ない、様々な地形の島で合計13本の堆積物の採取ができた。それらの堆積物の年代編年もすでに明らかとなった。また、島が大きく、高い山があり河川があるラロトンガ島では、約2500~3500 cal BPには人類の植生改変が確認でき、考古学的データよりも古い時代に人類が到達していた可能性があったのに対し、島が小さく、高い山がなく河川がないアチウ島では、約1700 cal BPに人類の植生改変が確認され、考古学的データと調和的な結果得られた。また、これまで得られた研究成果を、日本貝類学会、日本島嶼学会、日本花粉学会、パレオアジア文化史学研究大会で発表し、さらに、本科研の研究集会を国際火山噴火史情報研究集会内で実施し、これまでの研究成果および今後の研究について議論を行ったなど、おおむね順調に研究が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はコロナウイルス感染症による影響で、現在クック諸島には渡航できなくなっている。この影響は当分続く可能性があるため、今年度は新しい試料を得ることはせずに、これまで採取した堆積物の分析を進め、各島での植生変化の違いを把握するとともに人類到達時期の解明を行う。特に、島の標高が高く河川がある島(ラロトンガ島・マンガイア島)と標高が低く河川がない島(アチウ島・マウケ島)で、人類到達時期の差があるのか明確にする。さらに、ラロトンガ島カレカレ湿原で得られた12 mコアの分析を行い、熱帯域の過去6500年間の環境変化を解明するとともに、堆積環境の変化からラロトンガ島の海岸地形変化や海面変動も解明したいと考えている。
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Research Products
(11 results)