2018 Fiscal Year Annual Research Report
大規模自然災害からの生活再建─被災者の移住と社会的紐帯に関する文化人類学的研究
Project/Area Number |
18H00777
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
李 仁子 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (80322981)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金谷 美和 国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 外来研究員 (90423037)
二階堂 裕子 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 教授 (30382005)
佐藤 悦子 東北大学, 教育学研究科, 博士研究員 (70749415)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 1東日本大震災 / 津波 / 移住 / 生活再建 / 社会的紐帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である本年度は、メンバー間の円滑な情報共有のためのシステム構築と、被災地住民の復興住宅への移住の全体像を把握することに専念した。研究メンバーは情報共有やディスカッションのため、クラウドやSNSを必要に応じて導入し、それを駆使して2回の共同研究会及び共同調査を行った。李は、調査地が近いという利点を活かし、45回ほど調査地に通いながら、仮設住宅から復興団地や自力再建の移転を行った人たちへの聞き取り調査を行った。被災者の移動・移住の過程を4つのフェーズに分け(① 震災前の集落で ② 避難所もしくは避難先で③ 応急仮設住宅やみなし仮設で④ 復興住宅や自力転居した住居などへの入居後)、それぞれのフェーズごとに個々の被災者が有していた社会的紐帯(多様なつながり)のありようを明らかにすることを目指した。実際の調査では、被災の傷が癒えていない人も多く、時系列に沿って順に話を聞くことが困難なケースもしばしばであり、複数回の聞き取りを経て、ようやく調査者が後から点を線につなげて全過程を再構成する場合が多かった。 研究分担者の金谷と二階堂は、李との共同調査と並行して、それぞれの専門分野をいかした調査にも取り組んでいる。インドの震災被災地で手仕事をめぐる調査研究を行ってきた金谷は、被災地の女性たちの手仕事をめぐる人々のつながりについて国際比較の視点を導入しつつ聞き取り調査を進めている。在日外国人の調査研究を行ってきた二階堂は、被災地に新たに入ってきた外国人労働者らの調査を行い、仕事で関わりを持つ被災者への聞き取りも進めている。 さらに李は、韓国のソウル大や高麗大との研究者間交流を図りつつ、アメリカのジョージメイソン大学の招聘を受け、研究成果の発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査対象の被災者に関して、おおよその全体像を把握することができ、今後の調査計画を確実なものにすることができた。主たる調査地である石巻の復興住宅H団地の中でも、今まで調査がさほど進んでいなかった旧G町の元住民の移転などについて聞き取りによって把握できた。また、李は韓国の雑誌を通して、研究成果を発表した。アメリカのジョージメイソン大学からは招聘を受け、研究発表を行った。金谷は、被災地の手仕事と女性たちのつながりについて、論文にまとめた。 しかしながら、被災者のフェーズごとに個々の被災者がどのような社会的紐帯を有していたか、そのありようを一人一人入念に聞き取り調査をすることを共同で行うことへの難しさを感じている。大半のケースは李が一人で担当している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、「大規模自然災害からの生活再建は、被災者の移住に伴う社会的紐帯がどのように変わり生成されるのか」について現地調査を進める。後半はその成果を整理し、李と金谷、佐藤、二階堂が知見を共有し、統合的なモデルを構想する。 李は、H団地の旧K町に住民のフェーズごとの社会的紐帯について考察し、分析する。金谷は、引き続き手仕事の女性たちの社会的紐帯を担当し、知見を共有する。二階堂、佐藤は被災地の外国人の社会的紐帯に注目する。
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Research Products
(8 results)