2020 Fiscal Year Annual Research Report
アンデス文明初期における神殿の資源利用からみた社会複雑化プロセスの研究
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18H00779
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
井口 欣也 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (90283027)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アンデス文明 / 形成期 / 社会複雑化 / 考古学 / クントゥル・ワシ / ペルー |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、調査対象国のペルーにおける新型コロナウィルス感染拡大の影響により現地発掘調査を実施することが不可能であったため、これまでに収集した考古学資料を用いて国内で研究を遂行するとともに、オンラインによって海外の研究協力者と本課題のこれまでの研究成果の検討や今後の研究計画について協議をおこなった。 まず、2019年に実施したクントゥル・ワシ神殿遺跡の発掘調査で得られた考古資料を、神殿における資源利用と社会複雑化の観点から多角的に分析した。その結果、神殿建築が集中する空間からやや離れた下方テラス部分で、黒曜石加工を含む生産活動や副次的な儀礼がおこなわれ、クントゥル・ワシ神殿に関連する活動が広い範囲で行われていたことが明らかとなった。 また、2019年に抽出した土器に使用された顔料サンプルについて、米国の研究協力者と協働して科学分析を実施し、その成果を2020年に論文として発表した。さらに、2019年に抽出し手続きを経て日本に輸出した動物骨資料サンプルの同位体比分析を研究協力者とともに実施し、動物資源利用に関して得られた新たな知見について、シンポジウムにおいて共同発表をおこなった。さらに、これまでの研究成果をもとに、クントゥル・ワシ神殿における地域間交流の変遷をテーマとした論文を執筆した。 さらに、月に1回の頻度でペルーの研究協力者とオンラインによる研究会を開催し、これまでの本課題の研究成果の検討と、今後の発掘調査の方針について議論をおこなった。これによって、次年度の現地調査の具体的な方針が定まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの影響により、予定していたペルーでの発掘調査が2020年、2021年の2年にわたって実施できなかったため。上述のように全面的に国内研究に切り替え、一定の成果はあったものの、新しい考古資料の収集という点ではやや遅れていると判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題のこれまでの研究成果と進捗状況を検討した結果、今後の研究の推進方策として、以下の点が挙げられる。 1.新型コロナウィルス感染拡大の影響によって遅れていた現地発掘調査による一次資料の収集を推進することが必要である。具体的には、2019年の発掘調査で明らかになったクントゥル・ワシ神殿遺跡の下方テラスにおける発掘調査を拡大し、神殿の祭祀活動や建築活動を支えた社会的背景について明らかにしていく。 2.ペルー現地で研究代表者の管理下にあるクントゥル・ワシ遺跡の考古学資料について、資源利用の観点から多角的な分析を進めていく。具体的には、植物遺残体、人骨、動物骨、炭化物資料、土器原材料等の科学分析を進め、本課題の研究視点でもある資源利用の実像解明に迫る。 3.国内研究としては、これまでに蓄積されてきたクントゥル・ワシ遺跡の膨大な考古資料の分析結果を統合し、アンデス文明形成期の祭祀センター(神殿)と社会複雑化との関係について、他地域の文明初期における様相とも比較しながら理論的な研究を推進する。
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Research Products
(5 results)