2019 Fiscal Year Annual Research Report
Anthropological Studies on Memory of Diaspora and Media for Remembering
Project/Area Number |
18H00783
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩谷 彩子 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (90469205)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇田川 彩 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(PD) (20814031)
滝口 幸子 城西国際大学, メディア学部, 准教授 (30615430)
左地 亮子 (野呂) 東洋大学, 社会学部, 准教授 (50771416)
黒田 晴之 松山大学, 経済学部, 教授 (80320109)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 記憶 / ディアスポラ / ホロコースト / モニュメント / アーカイヴ / 音楽 / ロマ / ユダヤ人 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究会を3回開催し、1)クレズマーおよびロマ音楽にみられるディアスポラの記憶のあり方(アメリカ合衆国、オーストリア、ルーマニア、ドイツ)、2)ホロコーストのモニュメントによって喚起されるナショナリズム(ドイツ、イスラエル)、について共同研究者間で研究成果を共有し、問題関心を深めた。このうち2回は外部から多様な専門分野の講師やコメンテーターを招聘し、議論の幅を広げることができた。 2019年8月には、左地がポーランドとフランスで、ヨーロッパの「ジプシー」/ロマの間で高まるホロコースト(「ポライモス」)の記憶継承をめぐる新たな動きに関する調査を行い、滝口がオーストリアにおけるロマの音楽のアーカイヴ化の動きと、当事者であるロヴァーラ・ロマによる音楽伝統の再興の動きに関する現地調査を行い、宇田川はイスラエルで調査を行い、国家的なアーカイヴ装置(モニュメント、ミュージアム)で構築されるディアスポラの記憶と、そうした記憶の基盤を問い直すアート作品に関する情報収集を行った。 一方で、新型コロナウイルスの影響により、黒田・岩谷は2~3月に予定していた現地調査に赴くことができず、計画の変更を余儀なくされた。黒田・岩谷は資料調査と論文執筆、研究会・学会での口頭発表に軸足を置き、研究成果の報告と問題意識の深化をはかった。黒田は、アメリカ合衆国におけるクレズマーとアメリカ合衆国のフォーク音楽との遭遇や、ドイツにおけるイディッシュ歌謡の復興について考究し、クレズマーを離散先の音楽伝統あるいは「フォークなるもの」の生成過程のなかに位置づけることを試みた。岩谷はルーマニアのロマが従事するマネレというエスノ・ポップと、1990年代以降ルーマニア各地で建築が進んだロマ御殿に共通する「過剰さ」「表層性」「刹那性」に着目し、これを定位を拒み<現在>を創出することを追い求めてきた彼らの記憶の営みとして考察した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
定期的な研究会の開催を通して、各自が共同研究の問題意識を共有し、発展させることができている。想起の媒体によるディアスポラの共同体の記憶の生成を問う際に、媒体ごとにどのように異なる分析の視角があるのか、特に今年度はアーカイヴ、メモリアル、アート、音楽に焦点を当て比較検討することができた。研究会では、歴史学者、音楽学者、芸術家、音楽評論家など、幅広い層から知見を得る機会もあり、研究課題に関する議論の進展があった。一方で新型コロナウイルスの影響で、一部予定していた現地調査と資料収集ができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)現地調査を充実させ、人間のみならず想起の媒体を取り巻く空間や諸環境にも留意しながら、想起という行為について考察する。2)ナショナリズムの発揚にも通じる公的な記憶構築が不発に終わったり、別のものに置き換わる次元に着目する、3)新型コロナウイルスの流行により現地調査ができない場合は、オンラインでのインタビューや国内で別の対象を参考にした調査を行う。
|