2018 Fiscal Year Annual Research Report
Existential Aspects of Magical Practices and Witchcraft in Urban Nigeria
Project/Area Number |
18H00788
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
近藤 英俊 関西外国語大学, 外国語学部, 准教授 (40351556)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 調査準備 / 現地調査 / ナイジェリア / ラゴス / 呪術経験 / 呪医 / 教会 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々にとって現実は、基本的にはそうあって当然のものとして、そしてときにそうあることが不可解なものとして経験される。本研究は必然性-偶然性という現実の存在様相の観点から、ナイジェリア都市住民の呪術経験の理解を目指す。したがって本研究は呪術経験に関する現地調査を中核におき、その準備と文献研究を合わせて実施する。 現地調査は、呪術経験についての聞き取り調査、託宣、祓いなどの儀礼や集会の観察、呪術経験と生活全般に関する特定の個人や家族の長期的事例調査からなる。調査準備とは、現地の情報収集、滞在許可の取得、調査地の決定、宿泊地の確保、調査助手及び調査協力者の確保、現地大学関係学部への協力関係の樹立などのことである。初年度にあたる今年度の研究では、調査準備に力点をおいた。 まず調査準備についてだが、当初ナイジェリア北部のカドゥナ市を調査地とする予定であったが、治安が急速に悪化していることが現地入りする直前に判明した。このため事前に代替地として検討していた南部の都市ラゴスに調査地を変更した。調査経験のあるラゴスには友人が多く、彼らを通し滞在許可の取得、調査地の決定(アリモショ・アゲゲ両地区)、宿泊地の確保(友人宅)、調査助手及び協力者の確保はスムースに進んだ。また大学との協力関係については、イバダン大学アフリカ文化研究所から協力の承諾を得た。 2回の現地調査のうち、聞き取り調査については、病、事故や夫の浮気などをめぐる不可解な事態が呪術と関連づけられる語りを記録した。長期的事例調査では、仕事や家族などの問題に加え、奇跡としかいいようもない救済や成功の経験について記録することができた。儀礼や集会の観察については、教会の礼拝と呪医の託宣及び祓いの儀礼を観察した。一例として、男女関係が安定しない女性に憑いたとされる「霊的夫」を、女性から祓う呪医の供儀を詳細に記録することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では治安上の問題、すなわちイスラム教シーア派の暴動と一部警察との共謀による身代金目当ての誘拐事件を受け、調査地をカドゥナからラゴスに変更せざるをえなくなった。また第1回現地調査では関西国際空港の閉鎖によって帰国が遅延し、第2回調査ではナイジェリア大統領選に伴う治安悪化を理由に大使館から滞在申請を一時却下されるなど、時間と経費を大幅にロスした。それにもかかわらず現地調査は比較的順調に進んだのは、ラゴスの友人たちの協力に多くを負っている。 これまでのところ聞き取り調査では、3つのアラドゥラ系教会と1つのペンテコステ系教会の信者合わせて20名に行った。長期的事例調査では、2家族と呪医を含む6人に対し、インタビュー、インフォーマルな会話、日常生活の観察を実施している。儀礼・集会の観察は、上記4教会を含む6つの教会の礼拝と4人の呪医の託宣・祓いの儀礼に対して行われた。 進展していない項目としては、呪医のクライアントに対する聞き取り調査、長期的事例調査における呪術経験の記録があるが、今のところ想定内のものである。文献研究は日本国内で大学業務の合間を縫って常時行っている。研究成果の報告については、調査がまだ緒に就いたばかりなので行っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
個人的呪術経験に焦点をおく本研究では、長期的事例調査をとくに重視している。それには現在この調査手法に協力している人々への調査を継続するとともに、協力者数を拡大する必要がある。今年度はできれば3家族と10名の個人にこの調査を実施したい。その協力者をどう確保するかだが、一つは聞き取り調査の協力者にこの調査を依頼することである。すでに聞き取り調査協力者全てに継続的調査がありうることを伝えてあるが、実際に協力に応じてくれるのは数名に留まるとみている。聞き取り調査をさらに実施することによって、長期的事例調査候補者を補充する必要がある。すなわち両調査は今後も並行して継続するつもりである。 一方、儀礼や集会の調査については、その有様をノートに取るだけでなく、レコーダーによる録音を試みてきた。しかし両手法とも詳細を記録するには限界がある。今後は折を見てビデオ撮影を試みるつもりである。ただし今年度それが実現するかはまだ判然としない。呪医や教会リーダーとの信頼関係を打ち立てることがまずもって重要であり、それには今しばらく時間がかかるとみている。
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