2018 Fiscal Year Annual Research Report
世界正義理念の再構築による移民難民政策の規範的指針の研究
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18H00790
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 達夫 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (30114383)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 法哲学 / 難民 / 移民 / 世界正義 / 移動の自由 / 入国管理法 / 少子高齢化 / リベラリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、世界正義理念の再構築を通じて、日本の移民難民政策の規範的指針を提示することである。 初年度は特に世界正義理念の再構築という点に焦点を当てて研究を進めるとともに、日本の移民難民政策の規範的指針を提示するという次年度の取組みの準備作業を行う予定であった。ところが、今年度中に日本の入管法が改正され、日本の移民難民政策が大きく変更されたことをきっかけに、当初の研究計画に加えて、日本のこうした動向に対応するための研究も行った。 第1回会合(5月19日)では、世界正義論の観点から移民難民問題を議論することの重要性を確認するとともに、とりわけフェミニズム正義論の蓄積を広く確認した上で、ドメスティック・ワーカーの移民に関連する問題についても議論した。第2回会合(6月10日)では、移民政策における家族の位置付けにも示唆を与えるような研究報告を題材に、議論をした。第3回会合(8月28日)では、現在欧米で巻き起こっているイスラム系移民の排除に関わる問題を検討した。第4回会合(12月22日)では、難民問題に関する報告を行い、国際人権法の知見と法哲学の知見とを生産的に接合させる必要がある点が確認された。 次年度の取組みの準備作業として、8月28日・29日には、世界正義と移民正義を扱うにあたって、日本の移民受入れや日本の人口減少への対応の実情を、より「現場」に近いところで調査するため、静岡と焼津にて視察・聞取りを行った。 また、日本の新たな動向に対応するために、日本の移民難民政策の規範的指針を提示する上で必要な日本語文献・英語文献を改めて選定・購入して、科研メンバーに共有した。3月1日には東京入国管理局、羽田空港支局を見学し、人権保障の観点から日本の入国管理の政策・業務を検討するための素材を集めるとともに、第5回会合にて有識者を招き、直近の改正入管法に関する講義を受け、議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「世界正義理念の再構築」に関する研究を本年度の早期に完遂したのみならず、日本の入管法改正という最新の動向に対応するために研究計画を一部見直した上で、「日本の移民難民政策の規範的指針の提示」に関する研究の準備作業も完遂した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は「世界正義理念の再構築」という点に焦点を当て、研究を行ってきた。また、東京入国管理局や羽田空港支局の見学、静岡での調査、有識者へのヒアリングなど、移民難民政策の規範的指針を提示するための作業を行った。 次年度は、今年度の成果を踏まえ、「日本の移民難民政策の規範的指針の提示」に関する研究に一層本格的に取組む。これにあたって、研究代表者・連携研究者らが参加する定例研究会合を催す。こうした場で、世界正義理念に関する今年度の研究成果を踏まえ、種々の政策の是非を議論するとともに、今年度の研究成果をブラッシュアップする。 また、研究代表者ら数名を、スイスのルツェルン大学で開催されるIVR世界大会に派遣し、本科研の研究課題に関連する報告を聞き議論に参加するとともに、IVRまでに得られた本科研の研究成果を報告して、フィードバックを得る。 なお、2018年度末をもって井上彰は研究協力者ではなくなった。
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Research Products
(19 results)