2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18H00792
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
川口 由彦 法政大学, 法学部, 教授 (30186077)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小石川 裕介 公益財団法人後藤・安田記念東京都市研究所(研究部), 研究部, 研究員 (00622391)
出口 雄一 桐蔭横浜大学, 法学部, 教授 (10387095)
兒玉 圭司 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (10564966)
宇野 文重 尚絅大学, 文化言語学部, 准教授 (60346749)
岡崎 まゆみ 立正大学, 法学部, 准教授 (60724474)
林 真貴子 近畿大学, 法学部, 教授 (70294006)
宮平 真弥 流通経済大学, 法学部, 教授 (80337287)
山口 亮介 中央大学, 法学部, 准教授 (80608919)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 行政村 / 大字 / 名誉職 |
Outline of Annual Research Achievements |
明治維新は、日本社会に大きな混乱をもたらした。中央政府のレベルでは、旧大名、公卿、藩閥有力者等のさまざまな実力者が激しい対立を繰り返した。この結果、政府を離れて武装蜂起する者も珍しくなく、明治10年代までは、国家権力はきわめて不安定で、国家組織も頻繁に変更が加えられ、なかなか一定しなかった。 こうした状況下で明治政府は、さまざまな国家事業を構想し、その実現を地方に迫った。ここで求められたのは、中央国家の要請を迅速に遂行する地方役場体制と充実した財政基盤であった。この目的のもとで、地方では、数ヵ村を合併させ、地方の人的・物的資源を国家事業に集中させる計画が企図された。地方行政は、有給官吏ではなく、無給の名誉職者たちに委ねられ、この体制の下で富裕な豪農・地主層だけでなく自作層まで動員されることとなった。彼らは従来経験したことがないような多大の負担を否応なく負わされたため、辞退者が続出し、地方での事業推進は必ずしも順調に進まなかった。 富県村役場資料の特徴は、他地域でみられない、明治10年代の資料が多く残っていることにある。他地域では、町村制が施行される明治22年以降の資料、それも明治30年代以降の資料しか残されていないことが一般的だが、富県村では、明治10年代より戸長役場の動きを示す資料が多く残されているのである。この明治10年代の資料を具体的に挙げると、「請願届綴」「経費日計簿」「代人保証綴」などがあり、これらの資料から、明治10年代における町村合併がいかなる事態をもたらしたかを解明する手がかりを得られた。そこには、役場体制の再編成が、新規になされた私的所有公認の諸政策と絡み合いながら進行する状況が確認できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の調査は、夏季と冬季に予定通り行われた。この調査は、富県公民館に所蔵されている旧役場資料の仮目録を作成した上、資料をデジタルカメラで撮影するという内容であった。この調査は、研究代表者、分担者が日程を調整して臨んだが、近年の大学業務の多忙化・多様化によって直前に調査に来られなくなった者もいた。しかし、研究協力者(研究者およびアルバイト)を動員することによって人数を補った。この結果いずれの調査でも、購入したデジタルカメラ5台に、参加者個人が利用できるカメラも加え、常に6から7台のカメラで資料を撮影することに成功した。 撮影については、明治期資料の撮影が順調に進み、その中で明治10年代の資料については、簡単な内容整理にも着手することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度同様、年2回の現地調査を行って資料を撮影する。研究者の参加については大学業務の多忙化に伴う一定の困難の発生が予想できるが、その分を研究協力者とアルバイトの確保によって補っていく方針である。 これまでのぺースを崩すことなく、明治期資料を撮影し終え、大正期資料の撮影に入りたい。 資料分析については、明治10年代資料の内容整理をさらに進め、明治20年代資料とのつながりを見いだすことを目標とする。
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