2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H00792
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
川口 由彦 法政大学, 法学部, 教授 (30186077)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小石川 裕介 公益財団法人後藤・安田記念東京都市研究所(研究部), 研究部, 特任研究員 (00622391)
出口 雄一 桐蔭横浜大学, 法学部, 教授 (10387095)
兒玉 圭司 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (10564966)
宇野 文重 尚絅大学, 文化言語学部, 准教授 (60346749)
岡崎 まゆみ 立正大学, 法学部, 准教授 (60724474)
林 真貴子 近畿大学, 法学部, 教授 (70294006)
宮平 真弥 流通経済大学, 法学部, 教授 (80337287)
山口 亮介 中央大学, 法学部, 准教授 (80608919)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 行政村 / 大字 / 名誉職 |
Outline of Annual Research Achievements |
調査対象地域は、1879年に筑摩県の下で、貝沼村、福地村、新山村の3か村の合併によって富県村という行政村の下に置かれた。その後、1888年に町村制が制定され、これを受けて、富県村は、長野県上伊那郡富県村という行政村に再編成された。このような経緯から、富県村の行政は、常にこの3地域間のバランスをとることに力点が置かれた。 1892年に富県村役場が、村会に提出した事務報告等の資料によると、この村の尋常小学校は、貝沼、福地、新山の3カ所に教場があり、福地のものは「支校」、新山は「分教場」となっている。生徒数は、1年生から5年生までの総計で、貝沼100人、福地121人、新山95人で、これ以外に裁縫科生徒がいて、人数は、貝沼14人、福地19人であった。つまり、3地域とも規模はさほど変わらなかった。これに対応する教員の体制であるが、貝沼と福地では、それぞれ正訓導1人、「雇員」3人の4人で教育をしていた。つまり、両校あわて8人の教員がいた。新山には、准訓導が1人と雇員2人の3人の教員がおり、この体制は、貝沼、福地両校より見劣りがすると言っていい。裁縫科については、尋常科とは別に「雇教師」1人ずつが設置されていたが、生徒数に対して「不十分」で、「助手」を置く必要があると報告がされている。 3校の尋常科生徒数の総計は、5学年で316人で教員の総計は11人だから、教育の質を高めるため、1カ所にまとめるということも考えられるが、それができないところに合併村の事情がうかがえる。実際、この年の4月9日に開かれた村会の議事録によると、村尋常小学校の校数及び位置の議案(本校位置 池ノ窪、分教場位置 新山)に対し、出席議員9人中、3人が「不賛成」を唱え、多数決の結果、6対3で議案が可決されるという緊張した場面が見られる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度と同じく、今年度の調査も、夏季と冬季に予定通り行われた。この調査は、富県公民館に所蔵されている旧役場資料の仮目録を作成した上、資料をデジタルカメラで撮影するという内容であった。この調査は、研究代表者、分担者が日程を調整して臨んだが、近年の大学業務の多忙化・多様化によって直前に調査に来られなくなった者もいた。しかし、研究協力者(研究者およびアルバイト)を動員することによって人数を補った。この結果いずれの調査でも、購入したデジタルカメラ5台に、参加者個人が利用できるカメラも加え、常に6から7台のカメラで資料を撮影することに成功した。 撮影については、明治期資料の撮影が順調に進み、昨年度、明治10年代の資料についての内容整理に着手したことを受けて、明治20年代の資料についての内容整理に進むことができた。また、富県村村長等を経験した北原家の資料を発見し、その撮影にも着手した。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度同様、年2回の現地調査を行って資料を撮影する。研究者の参加については大学業務の多忙化に伴う一定の困難の発生が予想できるが、その分を研究協力者とアルバイトの確保によって補っていく方針である。 昨年度で明治期資料の撮影が概ね終了したので、今年度は、大正期資料の撮影を本格的に行い、可能ならば昭和期資料の撮影に入りたい。 資料分析については、明治10年代資料の内容整理をさらに深め、そこで得た結果と明治20年代資料が示す行政村の様相との関係について分析することを目標とする。
|