2020 Fiscal Year Annual Research Report
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18H00792
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
川口 由彦 法政大学, 法学部, 教授 (30186077)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小石川 裕介 公益財団法人後藤・安田記念東京都市研究所(研究部), 研究部, 特任研究員 (00622391)
出口 雄一 桐蔭横浜大学, 法学部, 教授 (10387095)
兒玉 圭司 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (10564966)
宇野 文重 尚絅大学, 文化言語学部, 准教授 (60346749)
岡崎 まゆみ 立正大学, 法学部, 准教授 (60724474)
林 真貴子 近畿大学, 法学部, 教授 (70294006)
宮平 真弥 流通経済大学, 法学部, 教授 (80337287)
山口 亮介 中央大学, 法学部, 准教授 (80608919)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 行政村 / 大字 / 名誉職 |
Outline of Annual Research Achievements |
調査対象地域は、1879年に筑摩県の下で、貝沼村、福地村、新山村の3か村の合併によって富県村という行政村の下に置かれた。その後、1888年に町村制が制定され、これを受けて、富県村は、長野県上伊那郡富県村という行政村に再編成された。このような経緯から富県村の行政は、常にこの3地域間のバランスをとることに力点が置かれた。 富県村の北を東から西に流れる三峰川は、「暴れ川」と異名をとるほど氾濫・洪水の多い川で、富県村は、2-3年に一度の割で洪水に襲われ、多くの水田・稲と家屋が失われた。洪水対策のために地域総出で牛枠を作り、押し寄せる水を対岸に押し戻す瀬追いを行ったが、これを受ける対岸の美篶村や伊那町の沿岸諸村でも同様の瀬追いを行い、洪水対策のため三峰川沿岸の諸村は鋭い利害対立を抱えることとなった。一方で、富県村内ではこのような対応は、三峰川南岸の桜井、貝沼集落でとくに必要とされたもので、それより南部に位置する北福地・南福地においてはこの必要度は相対的に低かった。この4集落はかなり肥沃な土地を有しており、洪水がない年は農作物の恵まれた。この4集落には、三峰川の水を東隣する河南村で取水して、この水路を西側に延ばした「鞠ヶ鼻溝」という用水路が走っており、福地地域もこの水を使っていたが、桜井・貝沼地域に比べ水量が少なく同地域は、しばしば水不足に悩まされ、溜池を設置しなければならなかった。他方、場広山を挟んで東に位置する上新山、下新山は、山間の地域で収量がとくに多いわけでなく、3地域は別個の利害の下にあった。このように3地域の利害が異なる中、村予算を決定し、役職者を決定せねばならず、村の運営は、この利害対立の調整を3地域の名望家が担う中で進行していった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度と異なり、2020年度は、新型コロナ感染症の拡大により、東京。大阪から10人以上の人数で長野県富県公民館に赴くことがはばかられた。法律に基づく措置を元に行動制限を行ったため、今年度の調査は、夏季も冬季も行う事ができなかった。こうした状況は2021年度も同様で、この結果、調査は、2022年度夏にずれ込むこととなった。昨年度までの調査がかなり順調に進んでいるので、トータルで考えると、調査の到達点は、予定よりやや遅れていると言っていい。この調査は、富県公民館に所蔵されている旧役場資料の仮目録を作成した上、資料をデジタルカメラで撮影するという内容で、研究協力者を動員することによって人数を補った。 撮影については、明治期資料の撮影が順調に進み、明治20年代の資料についての内容整理に着手したことを受けて、明治30~40年代の資料についての内容整理に進むことができた。 また、古書店での資料調査で、明治10年代に発生した上新山地区内の北林集落に関わる入会紛争関係資料を収集した。
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Strategy for Future Research Activity |
現地での資料調査が遅れているため、今後は、調査人員をアルバイト雇用等によって増やすことが必要となる。一方で、現在作成中の公民館所蔵資料の目録を検討すると、明治前半期の資料には残存の偏りがかなりあり、この点、大字の文書や個人所蔵の資料等を探索する必要がある。 これまで、富県地域では、村長経験者を出した北原家の所蔵資料を閲覧・撮影したほか、伊那市内の古書店資料を調査して同じく村長経験者を出した埋橋家の旧蔵資料を発見し、購入の上撮影を行った。長野県地域には、戦前期において各地の名望家をリストアップし紹介する文献が発行されており、これらを利用し、また、公民館関係者等に聞き取りを行い、資料調査の対象を拡大していく。
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