2019 Fiscal Year Annual Research Report
持続可能な社会の「所有」モデル-財の利用と保全に関する共時的・通時的な利害調整-
Project/Area Number |
18H00807
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
横山 美夏 京都大学, 法学研究科, 教授 (80200921)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 靖浩 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (10298094)
荻野 奈緒 同志社大学, 法学部, 教授 (30546669)
愛知 靖之 京都大学, 法学研究科, 教授 (40362553)
佐久間 毅 同志社大学, 司法研究科, 教授 (80215673)
山代 忠邦 関西学院大学, 法学部, 准教授 (80738881)
原田 大樹 京都大学, 法学研究科, 教授 (90404029)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 所有 / 種苗 / 共通財 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主として、①種苗・遺伝資源、②不動産管理、③水資源について、資源利用に関する利害調整問題の分析および規制手段に関する検討を行った。 このうち、まず、①については、(a)品種登録制度(種苗法)と植物特許保護制度(特許法)の比較を行うとともに、アメリカにおける「植物品種保護法」の改正動向を検討することにより、種苗保護をめぐるアクター間の通時的な利害調整のあり方を考察し、日本の現行種苗法の課題を明らかにした。また、(b)農業経済学の専門家による講演会を実施し、そこでの検討をふまえて、種子の生産・保存・流通の仕組みに関する調査を開始した。 ②については、(a) 共有物の管理に際しては、共有関係解消の自由を認めるべきでない場合があること、そのような場合に共有物の管理に関する民法の規定を単純に適用することが不当な場合があることを明らかにした。また、(b) 相隣関係の規律として、管理不全土地の所有者に対して管理不全状態の除去を請求する旨の規律を民法に導入する意義について検討した。さらに、(c)動産の共有との比較により、物の種類・性質の相違に応じた共有関係における意思決定のあり方を定める必要性があることを明らかにした。 ③については、河川行政の原状や水利権の分配をめぐる法制度をその実務状況とともに検討し、現行制度の課題を明らかにした。 このほか、通時的観点からの利害調整を行うに際し、(i)問題となる財をどのような財として位置づけるべきかについて、イタリアやフランスにみられる「共通財」をめぐる議論状況の検討を行った。その結果、「共通財」論と従来のコモンズ論との異同が明確になった。また、(ii)将来世代の利益をどのように勘案すべきかに関し、フランスにおける「環境に関する物的債務」の位置づけをめぐる議論も参照しつつ、具体的な制度設計に関する検討を開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
種苗・遺伝資源、自然資源の利害調整方法に関する比較法研究につき、COVID-19の感染拡大のため海外調査を実施できなかった。また、国内における現地調査もCOVID-19拡大のため、今年度中に予定していた現地調査を実施することができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
COVID-19の状況が早期に改善するようであれば、予定されていた現地調査を早急に行うことにより遅れを取り戻す。それが見込めない場合には、聞き取り調査については、可能な範囲でビデオ会議システムによるオンライン調査に切り替える。また、全体の研究方針についても、現地調査が不可欠な研究ではなく、文献調査によって検討を進めることができる理論研究に比重を移すことによって、当初の目的を達成できるようにする。
|
Research Products
(18 results)